悲惨すぎる…実在した最悪の事故がモデルの邦画(1)エグすぎておかしくなる記者も…日本を激震させた悲劇とは?
交通事故に航空機事故、そして原発事故―。これまで数々の大惨事が日本列島を揺るがしてきた。一方で、歴史に残る事故は、たびたび映画の題材となり、観客にカタルシスをもたらしてきたのも紛れもない事実だ。今回は国内で起きた事故をテーマにした映画を5本セレクト。映画の見どころに加えて、史実も解説する。第1回。(文:編集部)
『クライマーズ・ハイ』(2008)
上映時間:145分 監督:原田眞人 原作:横山秀夫『クライマーズ・ハイ』 脚本:加藤正人、成島出、原田眞人 出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子 【あらすじ】 1985年8月12日、北関東新聞社の記者・悠木和雅は、登山サークルのメンバーである安西耿一郎とともに、国内最難関と言われる谷川岳に登山予定だった。 と、そんな折、社会部記者の佐山から日航機123便が御巣鷹山に墜落したとの一報が届く。編集局長の粕谷から、事故の紙面編集を担う日航全権デスクに任命された悠木は、早速事故現場へと向かうが、そこではワンマン社長の白河をはじめとする保守的な体制が跋扈しており―。 【注目ポイント】 「世界で最も安全な乗り物」といわれる飛行機。アメリカ国家安全保障会議のデータによれば、飛行機事故で死亡する確率は0.00048%と言われており、自動車事故で死亡する確率である0.9%に比べても約2000倍も低いと言われている。 ただ、飛行機事故は一度遭遇すると奇跡が起きない限りほとんど助からない。加えて、事故の規模も他の事故に比べて大規模になりがちだ。現に『クライマーズ・ハイ』の題材となっている日航機123便墜落事故(1985年)では、歌手の坂本九をはじめ520名もの尊い命が奪われ、生存者はたったの4名だったといわれている。 本作は、元新聞記者である小説家の横山秀夫が、日航機123便墜落事故の取材体験をもとに描いたヒューマンドラマ。監督は『突入せよ!あさま山荘事件』(2002)などで知られる原田眞人で、主演の悠木和雅を堤真一が演じる。 タイトルの「クライマーズ・ハイ」とは、低酸素状態により登山者の恐怖心が麻痺し、極度の興奮状態に陥ることを指した用語で、スクープを出そうと躍起になる記者たちの熱量を見事に言い表している。そう、この映画、とにかく「アツい」のだ。 なにせ登場人物たちは、記者であるにもかかわらず、皆罵倒を浴びせ合い、取っ組み合いながら記事を作り上げていく。恐らくこういった当時の空気は今の世の中では確実にハラスメントにあたるだろうが、それだけ各々が信念をもって仕事に臨んでいることの何よりの証左でもある。 なお、作中では、現場のあまりの悲惨さに半ば発狂する記者が登場するが、実際の現場も筆舌に尽くしがたいものだったという。現に原作者の横山は、当時の様子を次のように語っている。 「あの日、あの現場では、私の知るすべての形容詞と慣用句と言い回しを駆使しても御巣鷹を描写できなかった」(「惨状を前に、圧倒的な無力感 日航機事故と横山秀夫さん」『朝日新聞デジタル』2017年8月11日) (文:編集部)
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