フォルクスワーゲンの新型ティグアンに試乗! 扁平タイヤのRラインはどんな走り?
速度を上げていっても身軽な加速は変わらず、アクセル操作に対する加減速の応答も自然だった。その滑らかさは7速DSGの変速機に負うところである。カーブでの旋回性能にも優れ、車体全高が1,600mm以上あるSUVでありながらクルマとの一体感があり、運転していて楽しかった。 試乗前に気がかりだった偏平タイヤによる乗り心地については、新採用の2バルブ方式ダンパー「DCC Pro」を用いた制御が効果的で、偏平による硬さを覚えさせず、路面の荒れを巧みにいなしていた。常に快適さを失わない乗り心地が印象深かった。 乗り心地の点では、後席の快適さも優れていた。前席より後席の方が静かで、SUVというより上級セダンの後席に座っているかのような快さがあった。DCC Proの効果が後席の乗り心地にも及んでいるようで、カーブなどでの体の傾きも抑えられていた。足をきちんとおろして座れる座席のよさもある。この点は、上級ステーションワゴンの「パサート」よりも優れているほどであった。後席にも搭載されているシートヒーター(エレガンスとRラインに標準装備)も心地よく、心がほぐれる思いだった。 車体全幅はRラインで1,860mm(ほかのグレードは1,840mm)あるので、狭い道では左側のガードレールが気になった。それでも、運転自体に車体が大きいことによる鈍重さはなく、走りは軽快だった。
新型ティグアンはクルマとして大きく前進していて好印象だった。VWといえば質実剛健なイメージで、ティグアンもこれまでは、どちらかといえば実用性と信頼性で親しまれてきたクルマだったが、新型にはより洗練された上質さが感じられる魅力があった。今回の改良により、プレミアムブランドのSUVによりいっそう近づいたと言えるだろう。
■ 御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。
御堀直嗣