NISA口座を開くならどっち? SBI証券、楽天証券を5つの点から比較
新NISAがスタートしてもうすぐ1年。新NISA開始を機に、投資を始めた人も多いだろう。一方、「今年は乗り遅れたから来年こそは」と、NISA口座の開設を2025年の目標に掲げている人もいるかもしれない。 【比較まとめ】手数料、ポイント活用、投資商品数、経済圏への依存、安心感で比較した そこで本稿では、数あるNISA口座の中でも人気の高いSBI証券と楽天証券について、「手数料」「ポイント活用」「投資商品数」「経済圏への依存」「安心感」の5つの点から比較し、どちらがよりおすすめか解説した。
■■SBI証券と楽天証券を5つの点から徹底比較 1.手数料 「NISAで長期投資を」と考えるなら、ポイント還元やコスト(手数料)は重要だ。特に、投資信託の保有期間中にかかる信託報酬は必ず確認したい。 人気のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)やeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を取引する場合、どちらも買付時の手数料は発生せず、信託報酬も同等なため差はないものの、年120万円を投資した場合、ポイント還元(投信保有残高に応じて貯まるポイント)において400ポイントほどSBI証券が有利となる。 また、直近で話題を集めた楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型)は管理費用(含む信託報酬)が0.192%だが、SBI・S・米国高配当株式ファンド(年4回決算型)は信託報酬が0.1238%と信託報酬に差があり、年120万円の投資でこちらも1,000円弱、SBI証券が有利となる。 いずれもSBI証券の方が有利であり長期的にはそれなりの差となってくるが、短期的に見てこの程度の差を気にしない人であれば、手数料でどちらにすべきかを悩む必要はなさそうだ。 2.ポイント活用 SBI証券では、VポイントとPontaポイントを1ポイント=1円分として国内株式や投資信託の購入に使える。これらのポイントは、コンビニやスーパー、飲食店、ガソリンスタンドなど日常的に利用する店舗で貯める機会が多い。 一方、「楽天経済圏」に入れば楽天ポイントを集中的に貯められる。楽天市場で日常生活の買い物はほぼ完結するし、他キャリアから楽天モバイルにした場合の体感的なメリットも大きい。 日常的に活用するポイントにおいては、楽天に軍配が上がるだろう。 3.投資商品数 SBI証券の場合、「つみたて投資枠」対象商品のほとんどの投資信託を扱っており、銘柄数は248本にのぼる(2024年9月時点)。また、成長投資枠では、米国株、中国株、韓国株、ロシア株(受付停止中)、ベトナム株、インドネシア株、シンガポール株、タイ株、マレーシア株など海外株も豊富に揃い、総合的な商品数は国内トップクラスだ。 楽天証券も「つみたて投資枠」対象商品のほとんどの投資信託を扱い、銘柄数は241本(2024年12月時点)。成長投資枠では米国株のほか中国株、アセアン株などを購入できるが、総合的にはSBI証券に次ぐ規模といえる。 投資に興味関心がある人、経済ニュースを参考に日常的に株式投資をするような人ならSBI証券が優位になるだろう。しかし、普段は投資に手間をかけない人、そこまで経済ニュースを見ない人であれば、さほど楽天証券が不利とも言い切れない。 4.経済圏への依存 SBI証券の場合、楽天のような経済圏は存在しないため、一見、短期的なメリットは見えにくい。しかし、たとえば将来NISA口座を他社へ移したくなった場合でも、特定経済圏に縛られることなく自由に行動できるメリットは、長期的に見れば大きい。 一方、楽天経済圏で生活のあらゆるサービスを利用すれば、楽天ポイントが加速度的に貯まるというメリットを享受できる。ただし、メリットを求めるほど同経済圏への依存度が高くなり、特定サービスを他社に変えようとした時には、ポイント還元率が下がるというデメリットが生じてしまう。 個々のライフスタイルや経済圏との親和性にもよるが、特に楽天経済圏にいる場合、経済圏に依存するメリットがそのままデメリットにもなりうる。 5.安心感 SBIホールディングスは金融業界に特化し、銀行や保険などの関連事業を展開している。また、新規事業への過剰なリスクを避け、安定した経営を維持している。「経営の安定性」を重視する投資家にとって、SBI証券は安心できる選択肢の1つだ。 一方、楽天グループは多角的な事業展開により成長を追求してきた。ただ、最近は楽天モバイルの収支が改善されつつあり話題を集めたが、未だ経営上のリスクが小さいとは言い難い。 「楽天のチャレンジングな姿勢に一緒に乗っていける人」は楽天を選択して問題ないが、投資においては安定性が重視されることは確かだ。経営が盤石だという安心感は、SBI証券が優勢といえる。 ■■総括 - おすすめの証券会社は まず、投資手数料の金額を端的に見るならSBI証券に軍配が上がる。一方で楽天サービスをフル活用すれば、ポイント付与によってそれを超えるメリットを感じられる場合も多く、日常的な利活用も考えると楽天証券が有利だろう。 投資商品数はSBI証券が優勢だが、「投資は基本的に放っておきたい」という人にはあまり関係しないため引き分けとする。 経済圏への依存は、長期的に見ると人によってはメリットがデメリットになる場合もあるため、その点においてSBI証券に分がある。また、安心感についても個人の価値観によるが、投資では長期的な安定感が重視されるため、SBI証券が有利だろう。 総括すると、楽天サービスにフルコミットすることに不安がない人には楽天証券を推奨するが、投資運用のみの人はバランスや安心感、長期的なメリットを重視すると考え、総合的にはSBI証券がおすすめだ。 ポイントなど日常生活におけるメリットも含めるのか、それとも投資における安定性に重きを置くのか。人によって重視したい点は異なるため、自分にとっての優先事項を改めて考えてNISA口座を選びたい。
■ 武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中
武藤貴子