「人間が食物連鎖の中に入って自然界をどう守っていくか」不漁続くイセエビの天敵“海のギャング”ウツボをスナックに【SDGs】
静岡放送
静岡県南伊豆町では、特産のイセエビの不漁が続いています。イセエビの天敵・ウツボをなんとかしようと、地元の漁師と企業が立ち上がり、ウツボのお菓子づくりに取り組んでいます。 【写真を見る】「人間が食物連鎖の中に入って自然界をどう守っていくか」不漁続くイセエビの天敵“海のギャング”ウツボをスナックに【SDGs】 南伊豆町の石廊崎で水揚げされたウツボ。イセエビやカニなどの甲殻類、タコや貝も食べることから、「海のギャング」と呼ばれています。 渡し船「喜美丸」の船長・鈴木萌さんは6年前までイセエビ漁をしていましたが、ウツボの被害に頭を痛めていたといいます。 <喜美丸 鈴木萌船長> 「網にかかったイセエビや魚にそのまま食いついてしまうんですね。それで網をボロボロにしたり、食いちぎってしまうのがイセエビ漁への被害」 イセエビの町として、全国に知られる南伊豆町ですが、近年、漁獲量の減少に悩まされています。5年前、3万キロ以上あった漁獲量ですが、2023年は9000キロあまりに。3分の1程度まで落ち込んでいます。 その原因のひとつが、ウツボ。地球温暖化により、海水温が上昇し、イセエビの隠れ家になる海藻が枯れています。隠れる場所を失ったイセエビをウツボが見つけて、食べてしまうのです。 <下田支局 柴田寛人記者> 「イセエビの漁獲量減少を止めるために、イセエビを食べるウツボを使ったお菓子が『うつぼスナック』です」 静岡県下田市で菓子などをつくる「クックランド」。石廊崎に水揚げしたウツボをこの工場に運び、身と骨に分けます。 <調理人> 「見えますかね。骨が全部3ミリずつ」 ウツボには大量の小骨があり、処理に時間がかかります。 <調理人> 「自分も包丁の経験は長いんですけど初めてです、この難しさは」 初めはウツボの処理に1時間かかっていましたが、2023年秋から調理人2人が研究を重ね、半年ほどでわずか6分ほどに短縮。作業の効率が上がり、スナックの商品化に向けて、大きく前進しました。 さばいた身は蒸した後、細かく切って、片栗粉を混ぜます。温度を変えながら、米油で2度揚げて、ウツボの骨を煮込んだ特製のタレをからめます。オーブンで1時間ほど焼けば、「うつぼスナック」になります。 <下田支局 柴田寛人記者> 「甘いお煎餅みたいで、コリコリしておいしい。生臭さはまったくありません」
地元にはウツボ料理を提供する飲食店がなく、需要がないウツボを獲る漁師がいませんでしたが、石廊崎の渡し船「喜美丸」など南伊豆町と下田市の漁師が協力。クックランドがウツボを1キロ300円で買い取ることで、漁業者の副業として成り立つようにしました。 クックランド遠藤一郎会長は「ウツボには40年という平均寿命があるそうですから、磯の頂点でウツボを食べる魚がいない。そこに我々人間が食物連鎖の中に入って、自然界をどう守っていくかというものもテーマの1つなのかなと思っている」と語ります。 イセエビの食害を防ごうと商品化された「うつぼスナック」。南伊豆町の新たな特産品としても期待されています。
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