引っ越しの翌日ネコが行方不明に…! 捜索のプロ「ペット探偵」が明かす“チラシ”と“地図”の重要ポイント
引っ越しの翌日ネコ2匹が…
それから1カ月後、大分に越した佐藤さんの奥さんから電話がありました。なんと引っ越しの翌日に2匹とも行方不明になったといい、詳しい事情を聞くと、 「新居では敷地内で飼っていたのですが、運動するために作った庭の小屋から逃げ出してしまって。いなくなった当日は2匹とも声が時々聞こえたのですが、姿は見えなかった。翌日、いったんギャルソンは帰ってきたのですけれど……」 が、ここで夫婦は戻ってきたギャルソンを放してしまいます。コロラを連れて帰ってくると期待したのでしょう。これが事態を悪化させ、3日目にはギャルソンまで行方不明になってしまった。あいにく私は当時、複数の捜索に関わっており、実際に大分入りできたのは連絡から1カ月以上が経過した2017年の6月初めになっていました。 佐藤さんの新居は郊外の住宅街、いわゆるニュータウンにありました。これまで森の中に棲んでいた2匹は、全く違う環境へいきなり連れて行かれたわけです。 ご夫婦も、この大きな変化を心配していて、だから外の空気を吸わせよう、日向ぼっこもしてもらおうと、庭に専用の小屋を作ったといいます。ところが、木材と金網で作られた小屋から2匹は脱走した。しかも網の下に穴を掘って――。 土を掘るなんて普通のネコではまず考えられません。この2匹は、非常に野性味の強いネコだったのです。 ご夫婦からこうした経緯を聞いたのち、私は現場の調査に取り掛かりました。 まずは2匹が掘った穴のすぐ傍に立ち、周囲を見渡します。つまりは動物の立場になって考えるということで、どんなペットを探す時でも非常に大事な手法です。説明は難しいのですが、例えばギャルソンとコロラの目の高さで周囲を眺め渡すだけでも、景色はずいぶんと違ってくる。何を考え、どちらの方角に向かったのだろうか、と。 私はこの時ふと、2匹はあの葉山の森に帰ろうとしたのでは、と直感しました。「自分のうちはここではない」と考えたのかもしれない。ならば帰巣本能に従って歩くでしょう。ただ、ネコの方向感覚というのは個体差が激しく、そもそも今回は感覚を頼りに帰れる距離ではありません。また、2匹一緒にいなくなったことは一見プラスに思われますが、ネコ同士が一緒に行動するケースはほとんどなく、別々に捜索せざるを得ないと判断しました。 それでも私は佐藤さんに「見つかると思いますよ」と伝えました。行方不明から1カ月以上経っていましたが、自力で生きられるあの2匹なら、きっと生き延びているはず。私にはそう思えたのです。