更年期のイライラ、不眠、うつ症状。メンタルの不調を和らげる「漢方薬」と「生活リズム」
更年期を迎えると女性の体には大きな変化が訪れます。「更年期を単なる通過点ではなく新たなステージへの出発点ととらえ、後半の人生に向けて踏み出す準備をはじめましょう」と話すのは、医師・天野惠子さん。自身も更年期症状に悩んだ経験から、日本における「女性外来」の発展に尽力してきました。最新の情報をまとめた自著『女の一生は女性ホルモンに支配されている!』(世界文化社刊)から、更年期にあらわれやすいメンタルの不調と、その対処法を紹介します。
更年期は心が不安定になり、脳の働きも落ちる
更年期には、不眠、イライラ、うつ症状、もの忘れ、集中力や判断力の低下などメンタルの不調を感じることも多くなります。人によっては目立った身体症状はなく、主に精神神経症状が強く出る場合も珍しくありません。 それらの多くは女性ホルモン・エストロゲンの減少が原因で、時期が過ぎれば治まるのですが、更年期と結びつけてとらえられず、「認知症の始まりでは?」「うつ病だろうか」と悩む女性が多いのも現状です。 そのような患者さんに、更年期のホルモンの変化が心身にどのような影響を与えるかをきちんと説明すると、安心され、診察室に入ってきたときとは見違えるほど表情が明るくなるそうです。更年期を正しく知ることが心の安定にいかに必要であるかがわかります。
●柔軟な考え方と、周囲の理解が症状を軽減
更年期は家庭や職場など社会の中で重要な役割を担い、周囲から頼りにされる年代です。メンタルの不調を訴える患者さんと接していると、弱みを見せずがんばって周囲の期待に応えることに存在価値を見出し、心身に大きな負担を抱えている女性が多いようです。体が変化する更年期を機会に、考え方も柔軟に変えてみるといいのかもしれません。 そして重要なのは社会や家族の理解とサポート。大変さを訴え助けを求められる環境と、「いつもありがとう。無理しないで休んで」の言葉が、症状を半減させるといっても過言ではないのです。
市販の漢方薬を試してみる方法も
天野先生の治療は、患者さんの話をよく聞き、不調の原因を説明することから始まります。45~50歳の初期の不眠にはホルモン補充療法が比較的効きますが、それ以外のメンタル症状によく使うのは漢方薬。患者さんが“今いちばん困っている症状”を聞いてそれに合う漢方薬を処方します。 受診の前に、下記を参考に自分の症状に当てはまる市販の漢方薬で効き目を試してみるのも1つの方法です。漢方薬や抗不安薬などを用いても改善がみられない場合は、精神科の専門医を紹介しているそうです。