トランプ次期政権は対中国シフトを模索 欧州、中東、アジア…「3つの圏域」分散を回避 「トランプ2.0」の衝撃②
米国のトランプ次期政権をにらんだ外交的な駆け引きが早くも活発化している。ウクライナのゼレンスキー大統領は6日にトランプ次期大統領と電話会談し、ロシアのプーチン大統領もウクライナ侵略戦争の停戦協議に関心を示した。欧州、中東、アジアという「3つの圏域」で危機が同時進行する状況に歯止めをかけるため、トランプ氏がウクライナに関して早期の停戦を促すとの見方が強まっているためだ。 ■「安全の保証」求めるウクライナ ゼレンスキー氏は7日の記者会見で「ウクライナの安全を保証せずに停戦を急ぐのは危険だ」と強調した。停戦すれば、時間を得たプーチン氏が軍備を立て直し、必ず再侵攻してくるとの懸念がウクライナではきわめて強い。逆にプーチン氏は、自らに有利な形でトランプ氏と取引できることを期待している。 世界では今、中国、ロシア、北朝鮮、イランといった権威主義勢力が、米国の主導する国際秩序に挑み、利益や野心を追求している。欧州、中東、アジアという「3つの圏域」で紛争や危機が拡大・連鎖する未曽有の潮流が起きている。 米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」最新号は巻頭論文で警鐘を鳴らした。米中枢同時テロ(2001年)以降の紛争は地域や規模が限定されていたが、もはや投入資源や兵力、参入国の拡大によって膨大な損害が出る「全面戦争の時代」に回帰したと。 ■「3つの圏域」で同時進行する危機 不穏な時代の予兆はすでに顕在化している。 中東ではイランや親イラン勢力が米同盟国のイスラエルと紛争状態にあり、紅海で米国艦船や西側商業船舶に執拗(しつよう)な攻撃を続ける。ロシアのウクライナ侵略では北朝鮮が派兵してウクライナ軍と交戦した。 中国の習近平国家主席は2027年までに台湾侵攻の準備を完了するよう軍部に命じたとされる。中国軍が海上封鎖に着手した時点で米国が介入しなければ、日本や韓国に死活的な海上輸送路と供給網は寸断される。 この状況に米国はどう対処するか。トランプ次期政権入りをうかがう専門家の主張からは、バイデン現政権が続けてきたウクライナへの軍事支援を縮小し、台湾防衛に兵器をシフトさせる戦略転換が浮かび上がる。