新生活、最初の一枚は白いお皿で決まり。
White And Transparent
皿は沼だ。民藝、作家もの、海外のデザイナーもの、蚤の市で見つけるアンティーク、エトセトラエトセトラ。あらゆる生活用品で基本となる機能性と芸術性が、この円形に詰まっていると言っても過言ではなく、知れば知るほど、年を重ねれば重ねるほど、その魅力にからめとられ、食器棚にうずたかく積み上がってゆく。しかし、新生活の始まりを告げる最初の一枚は白いお皿で決まりだ。何を置いても映えるのは間違いなく、比べるほどに皿そのものの造形の違いに目が留まる。我々スタッフも一堂に並べてみて、それぞれの個性の違いを改めて認識した。それは目利きへの第一歩とも言えるだろう。 新生活とファッション
まず世界中で愛される王道中の王道は、〈イッタラ〉の「ティーマ」と〈サタルニア〉の「チボリ」だ。前者はカイ・フランクによるデザインで、フィンランドを代表するテーブルウェアの傑作。 後者はイタリアのバルやレストランで定番のぽってりとした丈夫な作り。パスタが最も似合い、驚くほど安い。
後者はイタリアのバルやレストランで定番のぽってりとした丈夫な作り。パスタが最も似合い、驚くほど安い。
ちょっと変わった舶来ものだと、〈アレッシィ〉の「テンデンス」。あのメンフィスが手掛けていたのだが、色付け前でいたって普通。ツッコミを入れたくなる可愛いやつ。
作家ものの白い器は、いろんなことに挑戦している人が作った、というほうが一周回った感があっていい。大阪の『dieci』の展示で、それはそれはアーティスティックな造形のオブジェを披露していたのは、益子で作陶する郡司庸久さんだが、こんなにシンプルなお皿も作っていた。棚に置いたときの存在感は残念ながら実物を見ないとわからない。
そして京都の『LADER』で見つけた「強化磁器プレート」なるものも紹介したい。業務用と作家もののちょうど間を取り持つ、というコンセプトで生まれたもの。いろいろちょうどいいですわ、ほんとに。
いちごがのっているのは、バウハウスを代表するヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルトが携わっていた「イエナグラス」社のガラスプレート。白と透明。ご飯とデザート。それくらいシンプルな使い分けだけでいいと思う。ちょっと贅沢な食材や調味料を買うことにお金を使うほうが豊かだぜ。 photo: Masaki Ogawa, styling: Yusuke Takeuchi, translation: Momoko Ikeda, edit: Ku Ishikawa(2024年4月 924号初出)
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