いち早くパリに愛された髙田賢三の仕事を追う展覧会が、東京オペラシティ アートギャラリーで開催中。
こうして髙田の快進撃が始まる。フランスへ渡航する船が立ち寄ったアジアや中東などの各地での体験が、のちのアイデアに繋がったと語っている。それを原点に広がったフォークロアなスタイルが髙田の代名詞となる。なかでも1970年代のクリエイションは評価が高いが、すでに世界各国の民族衣装からインスパイアされた作品を発表しており、そこにさまざまな手仕事の美しさを見ることもできる。 「特に70年代はやりたいことをすでにやりきったと自ら語るほどの充実ぶりで、さまざまなものを生み出しています。パリはいいものは貪欲に取り入れていく雰囲気があるから好きなのだとも発言しています。そして、その祝祭的で楽しいムードを作りだすために努力を惜しまなかった人です。旅に出てはいろいろなものを吸収し、次のコレクションに生かしました」(福島)
会場は大きく2章で構成され、後半は1980年代以降を中心に扱う。その間で、自身のブランドのクリエイションではないショーや舞台の衣装なども紹介される。1980年代になるとオリジナルの生地を用いた、髙田を象徴する花柄も多く登場する。多色を扱いながら、そのビビッドな色使いは上品だ。 「花柄へのこだわりはとても強く、決定稿まで何度も繰り返し描いたといいます。初期は資金的に難しかったものの、わりと早くからオリジナルの素材を作れていたようです。そしてそれは賢三さんを支える技術者の力がなくては為しえませんでした。もしかすると展示をご覧になって普通だと感じる方もいるかもしれません。しかしそれはいまみなさんが着ているものを、この時代に先んじて賢三さんが発表したからだといえます。もはや一般的な形になるほどまでに賢三さんの作ったシルエットは大きな影響を与えました」(福島)
それはまた、いまや一般的となったジェンダーレスな感性にもいえる。福島は「賢三さんはボディコンシャスな女性像ではなく、女の子が少年のような感覚で着こなす雰囲気を好みました。だからこそ当時の若い女性のあいだで大きな人気を獲得したのでしょう」という。 1983-1984AWで発表した日本の丹前をモチーフにしたコートはレディースのアイテムだが、ショーでは男性モデルが着用した。今回の展示でも女性モデルのマネキンには大きかったため、男性のマネキンを使用したという。髙田は1980年代にメンズのコレクションも始めているが、発表した作品の数々は「男性女性関係なく、ファッションを楽しんでもらえたらいいとの思いもあったのではないかと思うほど」と福島はいう。 時代を先駆け続けた髙田のクリエイションは見るほどに奥が深く、なにより心を躍らせるものだ。貴重な作品の数々をぜひその目で確かめてほしい。
『髙田賢三 夢をかける』
国内外でコレクションされる髙田の作品の数々を多数展示。幼少期から晩年までの足跡を追い、そのスケッチや肉声インタビューなども紹介する。〈東京オペラシティ アートギャラリー〉東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー3F。TEL 050 5541 8600。~2024年9月16日。11時~19時。月曜休館(祝日の場合は翌火曜日。8月4日は全館休館日)。一般1,600円。
photo_Satoshi Nagare text_Yoshinao Yamada