災害・有事で「経済を止めない」ために...「1日で対応」実現するサプライチェーン強靭化戦略
仮に災害でサプライヤーが被災しても、即座に状況把握、代替品供給ができるようになる――。電材メーカーのパナソニック エレクトリックワークス社が導入した先進的なSCM(サプライチェーン・マネジメント)システムとは
配線や照明器具から純水素型燃料電池まで、幅広い電設資材を扱うパナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)は、2020年にサプライチェーンの「途絶」を経験した。大手サプライヤーの火災により、約1年半にわたり一部製品の供給がストップしたのだ。 【図を見る】3000以上のサプライヤーと18の工場、20の既存システム、20万品番の部品情報のデータを統合 「お客様にご迷惑をかけた反省から、リスクマネジメントについての検討を行いました」と、同社サプライチェーン統括センターの森下賢治所長は言う。 こうしたサプライチェーン上のリスク管理は、なにも製造業1社だけが抱える課題ではない。昨今は、世界経済に大きな影響を与えたコロナ禍における物流遮断や、先行きの見えない不安定な国際情勢を背景に、経済を止めないため、人々の生活を守るために、その重要性がますます高まっている。 今年1月にも、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生した。とりわけ地震の多い日本では、いつどの地域が震災被害に遭ってもおかしくない。さらには集中豪雨による水害など、自然災害で各地が想定外の被害を受けるケースも増えている。 有事においても安定的な供給を実現するための、サプライチェーンのレジリエンス(回復力)強化。それを達成する手法として各社で導入が進むのが、SCM(サプライチェーン・マネジメント)だ。
平均10日から3日に短縮、しかし課題もあった
先進的なSCMの構築を進めてきたパナソニックEW社は、今年4月、「EW-Resi.(EWレジ)」と呼ぶシステムを導入した。 「ここ数年、当社では有事でも供給をストップさせず、需要にお応えして安定的な供給を続けるためのSCMオペレーション構築に取り組んできました」 5月末、パナソニックセンター東京(有明)での記者発表会でそう話したのは、同社の大瀧清社長。大瀧氏によると、目指すサプライチェーン強靭化の取り組みは、パナソニックグループが提唱するPX(Panasonic Transformation)の具体的な活動の1つだという。 「PXでは、私たちが磨き上げてきた現場の強みを最大限に生かし、現場の行動変容につながる『現場ドリブンDX』として活動を位置付けています。お客様の情報を起点に、バリューチェーン全体の整流化、省力化、自動化を実現していきます。 例えば、『営業DX』では顧客接点強化によるソリューション提案力の持続的強化、『ものづくりDX』では高品質で生産性の高いスマートファクトリーの実現、そして本日の主題となる『SCM-DX』では、EW-Resi.の導入によりサプライチェーンの強靭化を実現し、設備インフラ事業者としての社会的責任を果たしていきます」 同社がこのたび導入したEW-Resi.は、富士通の汎用システムと統合し、2023年4月にパナソニックEW社全社で稼働させた「ES-Resi.(ESレジ)」を発展させたものだ。 サプライチェーン統括センターの森下所長の説明によれば、最初のES-Resi.により、全社での情報共有、サプライチェーン上のアクシデントに影響を受ける部品の早期掌握、そして代替品の事前登録による対応アクションの早期化を実現した。 「Teamsチャットを使ったスピーディーな情報共有も可能になり、BCP(事業継続計画)状況の把握を平均10日から3日にまで短縮することができました。一方で、情報共有から先のアクションについては、従来通りに各所で属人的に行う必要があるなど課題もあった」(森下氏)