中国最大規模「石化コンビナート」完成の光と影 高付加価値素材まで一貫生産、供給過剰に拍車
中国の国有石油大手の中国石油化工集団(シノペック)は2024年12月19日、浙江省寧波市で建設を進めていた石油化学コンビナート「鎮海製油化工」の第2期プロジェクトが完成したと発表した。 【写真】山東省の大規模石化コンビナート「裕龍島プロジェクト」 これにより、鎮海製油化工を含む寧波石化コンビナートの石油精製能力は年間5000万トンを超え、中国最大規模になった。同コンビナートは石化製品の一大消費地である長江デルタの自動車、エレクトロニクス、紡績などの工業集積を支える供給拠点として期待されている。
■製油より石化製品に重点 鎮海製油化工の第2期プロジェクトでは、(既存製品の)生産能力拡大と高付加価値の新素材のプラント新設などに総額416億元(約8784億円)を投じた。それらには原油の常圧蒸留、流動接触分解、ポリプロピレン製造、プロパン脱水素など18のプラントが含まれている。 第2期プロジェクトの生産設備は(製油よりも)石化製品に重点を置いており、複数種類の高付加価値の新素材を原油の精製段階から一貫大量生産できる体制を築いた。
中国は国別で世界最大の石油精製能力を有している。国有石油大手の中国石油天然気集団(ペトロチャイナ)傘下のシンクタンクが2024年12月に発表した推計によれば、同年の中国の石油精製能力は約9億5600万トンに上り、世界全体の約18%を占めた。 「鎮海製油化工に加えて、山東省の裕龍島プロジェクトなどの新増設プラントが計画通りに稼働すれば、2025年の中国の石油精製能力は9億6000万~9億7000万トンに達するだろう」
シノペック傘下のシンクタンクである中国石化集団経済技術研究院は、12月19日に開催された業界フォーラムでそんな予想を示した。 ■構造的な設備過剰に 同研究院の解説によれば、中国では2020年から大規模な石化コンビナートの建設ラッシュが始まり、すでにエチレンとパラキシレンは供給能力が需要を大幅に上回る構造的な設備過剰に直面している。 そこに今、中国の国内景気の減速や石油消費の構造変化が追い打ちをかけている。中国石化集団経済技術研究院は、2024年の中国の石油消費量が約7億5000万トンにとどまり、前年比減少に転じたと見ている。その主因は工業セクターの有効需要不足と、EV(電気自動車)やLNG(液化天然ガス)トラックの急速な普及だ。
短期的には、石化製品の原料向け需要の伸びが輸送機器燃料の需要減少を相殺する見込みだが、中長期的な石油需要の縮小は避けられない。そんな中、2025年も複数のエチレンプラントの稼働が予定されており、需給のミスマッチがさらに拡大しそうだ。 (財新記者:羅国平) ※原文の配信は2024年12月19日
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