「それぞれの世界にプロがいるんだな」“大阪桐蔭で春夏連覇→5大商社の営業マンに転身”24歳の未来図「今はもう、野球をやろうとは思わないです」
社会でも活きた「大阪桐蔭の教え」
昨年は、英語の勉強と仕事を両立させながら社会人1年目を走り切った。 上京し、関東と関西で今までなかなか会えなかった野球を通じての友達や知り合いだけでなく、会社の同期・先輩など今までになかった会食の誘いが増えた中でも、勉強の時間はきちんと確保し、メリハリをつけながら日々を過ごす。 それこそ大阪桐蔭での厳しい寮生活と、練習の中で得た教訓が生きたこともあった。 「高校時代は『組織としてどう動くか』とか『人間力が大事』だとか、寮生活をする中で色んなことを西谷先生から教わってきました。直接結びついているかは分からないですけど、社会人になって『何か目的があるときに、その達成のために逆算して計画する』というところは自分なりに考えられたのかなと思います」
野球だけでなく…「業界それぞれの“プロ”がいる」
甲子園で春夏連覇を果たして、複数の同級生がプロ野球選手として羽ばたいていった。高校時代は普通の高校生とは違う、どこか特別な世界にいた。そんな自分が野球とはまったくかけ離れたビジネス界に身を置く。野球界と一般社会。ただ、そのギャップを青地はまったく感じなかったという。 「社会人としてこの業界に入った時から、その業界それぞれの“プロ”がいるという認識はずっと持っていました。入社してからは、どの世界でもライバルが多い中で、1番にならないとお金にならないということを意識するようになって、より自分の仕事に誇りを持てるようになりました。 僕は野球を極めることができないまま現役を引退してしまいました。だからこそ、プロへ進んだ4人へのリスペクトは強いです。野球は今でも好きですが、プロ野球は結果を残せなかったら給料をもらえなくなる。4人はそんな厳しい世界で勝負している。自分も負けられないなと思います」 千葉県に居住する今は、ロッテ所属の藤原とは頻繁に連絡を取り合っているという。 「シーズン開幕後は藤原がケガをしてしばらく会うことはなかったんですけど、オフシーズンになった今は週に1~2回は会っています。共通ではまっているゲームもあるので、それも大きいですね(笑)」 野球を一緒にやってきた野手の中で、「藤原は最もすごい選手」だと青地は今でも思っている。そんな選手でもなかなか一軍に定着できず苦しむプロ野球という世界に対しては「衝撃の方が大きいです」と苦笑する。それでも藤原はいずれ球界の顔になれる選手だと信じ、一緒にやってきた1人のファンとして応援したいと強く思っている。 野球を離れて約2年。高校時代、甲子園で打席に立った時のアドレナリンや火がつくような緊張感はなかなか味わえなくなった。代わりに今は週末にしっかり休みを取れ、趣味の時間も増えた。 シーズン中は社会人野球に進んだ仲間の試合観戦に出かけることもあったが、たとえ草野球でも再びグラウンドに立とうとは思わないという。ただ、会社にある野球部から「試合に参加してくれないか」と声を掛けられることもあった。 「この間、久しぶりに野球をやったんです。でも、結構チームのレベルが高くて……(笑)。試合で打席に立ったんですが、1球も当たらず三振して交代させられました。まったく戦力にならなかったです。もともとホームランを打つバッターではなかったですし、どちらかと言うと渋めのキャラだったので(苦笑)。いまは野球をやっていた時のような独特の緊張感は、一人前に仕事ができるようになって、会社の代表として自分がどこかに向かう時に味わえるのかなと思います」 今後のビジョンについて尋ねると「まだ自分の立ち位置や、やりたいことが明確になっていないので具体的なことは言えないんですけど」と前置きしたうえで、生き生きした口調でこう明かしてくれた。 「トレード部署に入った今は、まずそこでしっかり頑張っていくことが短期的な目標です。その経験を生かして海外でひとつの事業をしっかり作り上げられるようになることが中期的な目標。それに加えて自分がやってきたトレード業務で得た知識や情報・経験を生かして会社の核となる新規事業を自分で提案していけるようになるのが長期的な目標です。とにかく……良い営業マンになりたいです」
いずれは目標だった海外駐在も…
学生時代までに見せていた屈託のない笑顔は、やや引き締まった朗らかな“顔”に変わったようにも見える。この1年半で海外出張も先輩に同行して何度か経験し、視野もさらに広くなった。 「出張ベースで行くのではなく、いずれは駐在して戦力になれるように今は経験をしていくことですかね。今の生活を謳歌しながら、頑張っていこうと思います」 奮闘の日々は現在進行形だ。それでも青地の表情には、これからどんなことを成し得ようかとワクワクしながら目の前に広がる未知なる世界へ挑もうとする、充実感が漂っていた。
(「甲子園の風」沢井史 = 文)
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