3時間レースとなったゴールデンウィーク富士決戦……昨年の450kmとは違った展開が見られる? 特にGT300の戦略面に変化か
毎年ゴールデンウィークに開催される、伝統のスーパーGT富士ラウンド。今回の富士戦は、今季から採用される『3時間レース』という新フォーマットの初戦となる。 【動画】タイヤ無交換勢強し! 2024 スーパーGT開幕戦岡山:決勝ハイライト(GT300) 昨年までは、300kmレースと450kmレースの2種類が開催されていたスーパーGTだが、今季は300km、350km、そして3時間と、フォーマットにバリエーションを持たせた形となる。昨年の450kmレースは、赤旗により中断や途中終了となった大会を除けば、概ね2時間半強で争われたため、3時間レースはそれよりもやや長い戦いとなる。 昨年の富士450kmレースは、周回数が100周。これが3時間レースとなると、富士スピードウェイでのGT500のラップタイムを鑑みるに、周回数が20周前後増えることが予想される。当然、時間レースのため、セーフティカーランなどでスロー走行の時間が多くなればその限りではない。 決勝の流れについては450kmレースと大きな違いはなく、給油を伴うピットストップを2度行なうことが義務付けられている。そのためこの3時間レースは平たく言えば「450kmレースのやや長くなったバージョン」とも表現できるが、この周回数増によって各クラスの戦略面はどのように変化するだろうか? まずはGT500クラスに関して。昨年の第2戦富士(450km)では、100周のレースを均等に3分割して2回ピットインするのではなく、1回目のピットインを20周過ぎという早めのタイミングに行なう車両もあった。また開催地は異なるが8月の鈴鹿での450kmレースでは、NDDP RACINGの3号車が77周中の6周で1回目の給油ストップを行なうという極端な戦略を採った例もあった。 しかしながら周回数が増える今回の3時間レースでは、燃費の関係で1回目のピットストップを他車より早めるという作戦は採りづらくなり、ピットウインドウの幅が狭まるのではないかという意見もいくつか聞こえてきた。開幕戦ウイナーであるTGR TEAM au TOM'Sの吉武聡エンジニアは次のように指摘する。 「450kmレースと比べると、ピットウインドウはかなり小さくなります」 「昨年(鈴鹿戦)では、3号車(NDDP)がミニマム周回で入ってくるという作戦を採っていましたが、今回は30周以上は走らないと(燃費の関係で)ピットに入ってこれないと思います」 「そういう意味では、観ている方はあまり面白くないかもしれません……(笑)。ただ、GT300はこれまで1周目にピットに入ってくる車両がいたので、そこができなくなるだろうという点では面白いと思いますね」 吉武エンジニアがそう指摘したように、450kmレースにおけるGT300クラスの各車の戦略がどうなっていくかは注目と言える。 GT300クラスではこれまで、ブリヂストンタイヤを履くGTA-GT300勢をはじめとした一部の車両がタイヤライフの長さを活かし、レース開始数周で短い給油のみのピットストップを行なって義務消化し、レース中盤にタイヤ交換と給油、ドライバー交代を伴ったピットストップをする……言わば擬似的な1ストップにする“スプラッシュ作戦”が機能しており、この戦略を採ったチームが好成績を残していた。 しかしながら周回数の増加により、450kmレースと同じような戦略を採ることは難しいようだ。“スプラッシュ作戦”を活用していたチームのひとつで、開幕戦もタイヤ無交換作戦で優勝したmuta Racing INGINGの平良響は、レース戦略について事前に話すのは「言いにくいんですけど……」としつつ、次のように語った。 「レース距離も延びるということで、その作戦はけっこう厳しいかなと思っています」 「1回ピット(タイヤ交換)が厳しいと思うので、多分2回(タイヤ交換)で3スティントに分けると思います。あとは予選が少し涼しい気がするので、予選(と決勝第1スティントで履く)タイヤをちょっとソフト寄りにしてタイムを出して、決勝1スティント目を短くするのか、それとも(決勝に照準を当てたタイヤで)予選で耐えて、決勝1スティントを長めに走るか……ですね」 昨年はスプラッシュ作戦も活用しながらシリーズチャンピオンを獲得した埼玉Green Braveの近藤收功エンジニアも、燃費を考えるとスプラッシュ作戦はできないだろうと語った。 「3時間レースは450kmレースよりも距離が長くなります。周回数が20周くらい増えるということで、燃費を考えるとミニマム(ピットインできる最小周回数)は20周前後になります。ルール的には5周目からピットインができるのですが、燃費的には入れないのが現状です」 また今回は時間レースということもあり、最終的な周回数が未知数という点も悩ましい。例えば、事前には120周のレースになると想定して戦略を立てていても、ラップタイムが遅くなるセーフティカーランが長引けば、周回数が想定よりも少なくなっていく。これらを考慮した上で、ピットインのタイミングや給油時間を決めないといけないのだ。 そういった要素を鑑みて、ある程度マージンを持って戦略を立てるのかと近藤エンジニアに尋ねると、断固として否定。刻々と変わるレース状況の中、給油時間やピットタイミングをギリギリのところで最適化できるよう、常に計算を続けるという。GT300で結果を残すチームのメンタリティが垣間見えた瞬間でもあった。
戎井健一郎
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