「縮小ではなく再生」 三菱電機伊丹製作所副所長・長崎工場駐在 板野康晴氏【インタビュー】
三菱電機長崎製作所(長崎県西彼時津町)は4月の組織改正で伊丹製作所(兵庫県尼崎市)に統合され、「伊丹製作所長崎工場」となった。板野康晴副所長(長崎工場駐在)は「縮小ではなく、再生する」と強調する。 -2021年、長崎で契約と異なる検査やデータの虚偽記載が横行していたことが発覚。全社的な品質不正問題に拡大した。これが統合につながったのか。 品質不適切事案が起きる前から、ここ数年の厳しい事業環境を踏まえ統合を検討してきた。直接は関係ない。 -両拠点はいずれも社会インフラ系の製品を受け持つ社会システム事業本部に属し、交通関係が主力。統合の狙いとして「一体運営」を挙げたのはなぜか。 国内向け交通事業は新型コロナウイルス発生前の景況に回復しつつあるが、これ以上は伸びない。引き続き社会インフラの安定稼働により安全安心に貢献するため、収益性を改善する必要があった。経理や品質保証などスタッフ部門を集約し効率化を図った。人を減らすだけでなく適正に配置。資材調達コストも削減していく。一方、製造部門には触らず、事業そのものは統合前と変えていない。 伊丹は売り上げ規模が長崎の3倍以上で、扱う製品も多い。伊丹の手法を長崎に取り入れる。所長の下に長崎駐在と海外担当の副所長2人を配置。長崎工場長(藤田泰貴氏)は工場の管理や地域渉外、安全衛生などを担う。 -統合メリットはもう生まれたか。課題は。 伊丹は制御機器やモーターなどを扱い、長崎とはもともと考え方や“文化”が違う。互いの製品紹介から始め、相互に行き来し、新しい気づきも出てきた。業務や生産の改善からシナジー効果を出せれば。単に人を減らすだけでなく、新事業を創出していく。例えばデータセンター向けに非常用発電機などを単品ではなくシステムで売り込む。さまざまな機器を組み合わせたソリューション事業を強化したい。 -地元協力会社との関係性や仕事量に変化は。 統合後も取引を継続し、変化はない。 -大型映像装置「オーロラビジョン」は4月に新規受注を停止した。 製造は数年続ける。統合計画とは別に、市場の成長性や競争力を総合的に判断した。培った技術やノウハウは財産。新事業に生かしたい。 -長崎工場の先行きは。 車両用空調の国内シェア65%は大きい強み。JR東日本と共同開発した「スリットフレームホームドア」は東京圏在来線の主要路線に導入される。こうした先が明るい要素もある。工場を縮小するのではなく、再生するのが私の役割だ。