小倉久寛「お客さんの前でパフォーマンスするんだって、考えが至ってなかった」中村雅俊に憧れて飛び込んだ演者への道と自然体なままでたどり着いた古希の境地
シリアスからコメディまで、幅広い作品で唯一無二の個性を放つ俳優、小倉久寛。劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』の旗揚げから45年間、三宅裕司と共に歩み続けてきた小倉久寛のTHE CHANGEとは──。【第2回/全4回】 ■【画像】ドラマの中村雅俊に憧れて役者になった小倉久寛。古希を迎えたいまでは若者をかわいがる様子も。「目の大きさが全然ちがう」と元AKB48横山由依とのオフショット 大学生時代に見た、中村雅俊主演のテレビドラマ『俺たちの祭』(日テレ系)に憧れて演劇に興味を持ち、三宅裕司が出演する『大江戸新喜劇』の舞台に感動して、俳優の道に一歩足を踏み出した小倉久寛。しかし、その道は想像を超えて険しかった。 「『大江戸新喜劇』に入ってすぐ、お芝居に出ることになったんですけど、演技のいろはもわからないわけですから、演出家から叱られっぱなしですよ」 例えば、どんなことで叱られたのだろうか? 「いちばん覚えているのは“笑うな!”というダメ出しですね。真面目なシーンで、ぼくだけ笑ってるって言うんです。でも、自分としては全然笑ってなんかいないんですよね。だから“笑ってません!”って反論するんですけど、“自分じゃ笑ってるつもりがなくても、お客さんから見て笑っているように見えたら、それは笑ってるってことなんだよ!”と、また叱られる。いまだったら演出家が言ってる意味がわかるんですけど、当時のぼくには全然わかりませんでした」 他にも、意外なものを見つけてびっくりするシーンで「それじゃあ、見つける前からわかってるんだよ!」「見つけた人間はそんな顔しないだろう!」などなど、叱られることには事欠かなかった。 「シュンとしていると三宅さんがやってきて“だいじょうぶ、おまえはおもしろいから、そのまま行け”と慰めてくれて……嬉しかったですね」
「動機が、ドラマの中で中村雅俊さんたちが稽古したり飲み会したりしているのが楽しそう」
そして迎えた、初舞台。 「実は、役者というのはお客さんの前でパフォーマンスするんだっていうことに、初日を迎えるまで考えが至ってなかったんですね、ぼくは。だって、やりたいと思った動機が、ドラマの中で中村雅俊さんたちが稽古したり飲み会したりしているのが楽しそう……だったわけですから」 ドラマでは、本番のことはそれほど出てこなかった? 「もちろん、たまに出てきたんですけど、ストーリー的にそんなに大事なところじゃなかった(笑)」 舞台ソデで緊張に震えながらも舞台に立ち、気づいたら人生の2/3を、三宅と共に俳優として過ごしてきた。 「だからね、三宅裕司と出会ったことがすべてなんですよ。46年前、舞台上でお客さんの心をわしづかみにしていた三宅裕司がいて、それを“すげー!”と見ていたぼくがいて、それがずっと続いている感じです。冗談も言い合ったりはしますけど、決してなかよしのお友だちではない。仰ぎ見る存在だし、それはこの先もきっと変わらないと思いますね」 そんな2人によるコントライブが、2025年2月21日から上演される。1999年に劇団スーパー・エキセントリック・シアター創立20周年を記念しての第1回、2015年に小倉の還暦祝いとしての第2回に続いて行われるもので、タイトルは『小倉久寛生誕70周年記念コントライブ ザ・タイトルマッチ3 お楽しみはこれからだ~You ain‘t heard nothin’ yet~』。 「そうなんです、今年の10月に70歳、古希を迎えたんですよ。でもね、精神年齢は高校生か大学生くらいで止まってますね。ちっとも大人になってない(笑)。きっと80歳になっても同じことを言ってると思いますね」 小倉久寛(おぐら・ひさひろ) 1954年10月26日生まれ。三重県出身。学習院大学法学部を卒業後、劇団大江戸新喜劇を経て、1979年に劇団スーパー・エキセントリック・シアターの旗揚げメンバーとなる。以来、劇団の本公演だけでなく、舞台、映画、テレビドラマで活躍すると共に、バラエティ番組、ナレーター、声優としても活躍。主な出演作は、映画『千夜、一夜』(2022)、連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)、土曜ワイド劇場『おかしな刑事 シリーズ』(テレビ朝日系)など。 工藤菊香
工藤菊香