吉高由里子「まひろの人生第2章がスタートします」――大河ドラマ「光る君へ」
――ロマンチックな関係ですね。道長はまひろに「一条天皇のために物語の続編を書いてほしい」と頼みますが、この時、まひろは「自分が書きたいものを書く」という気持ちに変わっていました。なぜだと思いますか? 「一条天皇のために書いた物語に『私じゃなくても書けるかもしれない』と違和感を覚えたのではないかと思うんですよね。もしかしたら、道長から一条天皇の幼い頃の話を聞いていると、自分の幼い頃を思い出して書きたくなったのかもしれないですけど、書き続ける中で物語への向き合い方を変えていったら、一条天皇のためではなく、まひろ自身が面白いと思うものを書きたくなったのかなと」 ――なるほど。 「でも、書きたい気持ちにたどり着くのはとても大変だと思っていて。書きたい気持ちがあっても、書きたいことが明確にならないと書けないじゃないですか。まひろは、『書きたい気持ち』と『書きたいこと』がそろったからこそ夢中になって書いたんだと思います。イノシシのように自分の物語を書くことに突き進んでいったんじゃないかな。でもこの時は、結果を残してやろうという気持ちではなく、役目を果たしたいという気持ちですね」
――「まず物語を書くこと」に挑戦したからこそ、自分らしい道が開けたように感じます。まひろが内裏に出仕する日に、父の為時(岸谷五郎)は「お前が女子(おなご)であってよかった」と言いますが、どんな思いで演じましたか? 「まひろにとって、とても価値のある一言です。『お前も男であったらな』としか言われてこなかったまひろが、一番認めてもらいたいと思っていた父に認めてもらうことができました。生まれてきて名前をもらった喜びと同じぐらい大きなことだったと思います。役目をもらって内裏に上がれて、『やっと居場所を見つけた』と思っているのではないでしょうか」 ――新たな門出ですね。これから物語がどのように展開していくのか楽しみです。 「まひろの人生第2章が始まる感覚です。衣装や生活する場所、毎日見る風景もガラっと変わり、いよいよですね。自分で一歩踏み出さずとも、第2章に押し出されたような感じです(笑)。今までのストーリーは、第2章(紫式部として『源氏物語』を書いていく)の前書きだったような気がしていて。『源氏物語』を知らない方も理解できるような分かりやすいエピソードをちりばめられていたように感じます。ここからまた、一つ一つ花を咲かせていくことになると思うと、脚本の大石静さんが『産みの苦しみを乗り越えてやってきた』とおっしゃっていた気持ちがよく分かります」 ――「源氏物語」の誕生が待ちきれません! 「『枕草子』の誕生に負けないぐらい、すてきなシーンに仕上がっています! 筆が乗ったり、物語が全く思い浮かばなくて苦しんだり、作家として悩みながら『源氏物語』という一冊の本が出来上がるまでの過程は面白いですよ」 ――お話ありがとうございました!