俳優歴36年の鶴田真由、90年代はトレンディードラマで活躍も「代表作はまだない」と語るワケ
これまで巡った国・地域は50以上「古代の息吹を感じられる場所が好き」
そんな悩んだ時期もあったが、俳優を辞めたいと思ったことは1度もなかったという。 「例えば、蜷川幸雄さん演出の舞台(『真情あふるる軽薄さ2001』)に出演させていただいた時は、『これが終わったら少し休みたい』と思いました。その舞台は初舞台で、準備期間も長く、集中力をかなり使う仕事だったので、終わってからゆっくりと自分に戻る時間が欲しかったのだと思います」 代表作にはドラマ『妹よ』『君と出逢ってから』『徳川慶喜』『お仕事です!』、映画『梟の城』『半落ち』があるが、本人の意識は少し違う。 「正直に言うと、いまだに『これが自分の代表作だという作品はない』と思っています。いくつも好きな作品はありますが、『これが自分を表す1本』というものにはまだ出会えていないと思っています」 これはさらなる高みを目指したいという気持ちの裏返しでもあるのだろう。俳優業にはどんな風に向き合っていくのか。 「女優は一生やっていくのだろうとは思っていますが、私の中では意欲が『ある』とも『ない』とも言い切れない部分があります。常に自分の人生や仕事を『流れ』に任せているところがあり、もちろん必要な努力はしますが、同時にタイミングや運命にも任せています。このバランスを大切にしながら進めることで、良い出会いや新しい経験に繋がると思っています」 昨今では、俳優業以外の活動も目立つ。紀行番組への出演、写真展の開催に、旅エッセイ『ニッポン西遊記 古事記編』『神社めぐりをしていたらエルサレムに立っていた』(共に幻冬舎)など執筆も手掛けている。これまで巡った国・地域はアフリカ、パタゴニアまで50以上に及ぶ。 「新しい街よりも、古代の息吹を感じられる場所が好きです。その国の歴史、文化に触れられるところがいいと思います。イランは歴史も長く、もう一度見てみたい国のひとつです」 今一番大事だと感じているのは、「物事をていねいに見つめ、きちんと向き合うこと」だ。 「若い頃は、流れるように過ぎる時間に乗ること、そこで瞬発力を出すことに精一杯でしたが、今はひとつひとつの経験を深く受け止めていきたいと感じています。私には、人生をどこか預けているところがあります。流れに身を任せる部分は変わりませんが、そこにていねいさを加えながら進んでいきたいです」とほほ笑んだ。 鶴田真由(つるた・まゆ) 神奈川県鎌倉市生まれ。1988年に俳優デビューし、ドラマ、映画、舞台、CMなど幅広く活躍。代表作に『妹よ』『君と出逢ってから』『梟の城』『半落ち』などがある。96年、『きけ、わだつみの声』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。近年ではドラマ『らんまん』『自転しながら公転する』、映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』『日日是好日』など話題作に出演。また、旅番組やドキュメンタリー番組にも出演し、2008年にはアフリカ開発会議の親善大使も務めた。著書や写真集も多数出版し、近年は音楽家などとのコラボレーション活動やエッセイ執筆など多方面で活躍している。 スタイリスト:平井律子 ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER) 「連続ドラマW 誰かがこの町で」 WOWOWにて、12月8日(日)午後10時よりスタート(全4話) 放送:毎週日曜午後10時~ ※第1話無料放送 【WOWOWプライム】【WOWOW4K】 配信:第1話放送・配信後、全話一挙配信 【WOWOWオンデマンド】 出演:江口洋介 蒔田彩珠 鶴田真由 宮川一朗太 尾美としのり 玄理 戸次重幸 本田博太郎 でんでん 大塚寧々 原作:佐野広実『誰かがこの町で』(講談社文庫) 監督:佐藤祐市 脚本:前川洋一 音楽:木村秀彬 企画・プロデュース:青木泰憲 プロデューサー:廣瀬眞子 水野綾子 制作協力:共同テレビジョン 製作著作:WOWOW
平辻哲也