市原隼人、“正しい道”を求めて彷徨う男を演じ「苦しくも“かけがえのない時間”になった」
WOWOWとテレビ東京が共同で製作を手がける連続ドラマ『ダブルチート 偽りの警官 Season2』が、10月6日(日)からテレビ東京で放送される。 【全ての写真】市原隼人の撮り下ろしカットほか 今春に放送されたSeason1は向井理が演じる“警官と詐欺師の顔を持つ男”多家良の物語が描かれたが、Season2では市原隼人が演じる新たな主人公・田胡悠人が登場する。田胡は、物語の冒頭では素性不明の謎の男として姿を現し、“詐欺師を喰らう詐欺師”として暗躍する。しかし、彼は単なるダークヒーローではない。田胡役の市原は「田胡は自ら望んで人を欺いているのか? それとも何かしらの“使命感”を持って欺いているのか? それこそがすべてだと思うんです」と語る。
物語が進むにつれて面白さが変化していく作品
Season2は、“騙し騙され”を描く壮大なサスペンスでありながら、田胡の内面を描いていく重厚な人間ドラマでもある。 法で裁くことができない犯罪に立ち向かう詐欺師・Kこと多家良が警察に追われる身になったSeason1の最終回と入れ替わるように刑務所から出てきた謎の男。それが田胡悠人だ。彼はかつて海外拠点の特殊詐欺で逮捕された経験を持つ人物で、出所後に詐欺会社・ライドクリーンに入り込み、詐欺師を操り、罠にかけ、社内での地位をかためていく。しかし、物語が進むにつれて彼の過去や、抱えている哀しみが次第に明らかになっていく。 市原は「撮影が始まった段階ではまだ物語の最後をどうするか固まっていなかったのですが、テレビ東京さんとWOWOWさんの共同製作の醍醐味を感じながら何度もプロデューサー陣、監督と打ち合わせをさせていただきました。最初に脚本をいただいたときは、この作品を通じて何をお客様に伝えるのか?と考えれば考えるほどに……本当に難しかったですね」と微笑む。 というのも、本作では詐欺師や、詐欺師たちを束ねる“サロン”を主催する男との息詰まる駆け引きもたっぷり描かれるが、単なる知恵比べや騙し合いだけではなく“なぜ、彼らはここまでして詐欺をはたらくのか? 田胡はなぜ詐欺師を喰らうのか?”が重要なテーマになっているからだ。 「表面的には詐欺の話が描かれてはいるのですが、田胡のことが描かれていくにつれて、1話、2話……と面白さが変化していく作品なんです。最初、田胡は相手に感情を動かされることも、相手に感化されることもなく、自分の信じた道を進んでいくような人間として描かれています。でも、話が進んでいくと彼の中で“ズレ”が生じてくるんです」 シーズン前半の田胡は、市原の語るとおり、冷静で、表面的には“冷酷さ”すら感じられる男だ。相手を騙すプロ=詐欺師の懐に入り込み、言葉巧みに相手を誘導し、自身のテリトリーに引き入れる。セリフだけでなく、視線の動きや、ちょっとした表情や仕草で相手役と対峙する市原の演技は圧巻だ。 「撮影現場ではとにかく“周囲”を気にしていました。ドラマの撮影が始まる前にはすべてのセリフは頭に入れておき、現場では自分のセリフを整えていくというよりは、相手役の方の動きや形、目線、立ち位置を見ながら演技することを意識していました。自分のことよりも、相手の演者の方の話し方やリズムに集中して、どうすれば、この空間やここにある流れをキャッチできるのかだけを常に考えていました」 やがて田湖は、相手を騙し、罠にかける自分と、内面で起こる“ズレ”に苦しんでいく。市原は田胡を「自分自身で“田胡悠人という存在”を作り出してしまった人間」と分析する。 「相手を騙し続ける中で彼は自分の中のボーダーラインが分からなくなっていくんです。自分の正義のためと言いながら、本当に正しいことが何なのかが分からなくなってしまう。彼は過去やトラウマを抱えて、あらゆる逃げ道を積み重ねて“田胡”という人物を作り出してしまった。そこで表面的には相手と騙し合いをして、詐欺が積み重なっていくわけですが、その結果として、田胡は“本当の自分はどこにいるんだろう?”と思うようになるんです」