沖縄・八重山の教科書問題って何?/いきさつと論点は
沖縄県の石垣市と八重山郡(竹富町、与那国町)の3市町で構成される八重山地区では、3市町の間で中学公民教科書の採択結果が割れ、竹富町のみ国の無償給付でない教科書が使われています。文部科学省は竹富町に対し、地方自治法に基づく是正要求を出す方針を固めました。何が、どういう経緯で問題になっているのでしょうか。 問題の発端は、2011年夏にさかのぼります。八重山地区では、使用教科書を検討する採択地区協議会が育鵬社版の採択を答申し、石垣市と与那国町はこれに従いました。しかし竹富町は「手順がおかしく、答申にも法的拘束力はない」として東京書籍版の教科書を独自に採択。無償給付されないため、教科書を寄付金で購入し、使用しているのです。 保守色が強いとされる育鵬社の教科書をめぐっては、沖縄の米軍基地負担にあまり触れていないなどとして、同県内で反発の声が上がった経緯もありました。
背景に法律の矛盾も
こうした問題が起こる背景には、法律の矛盾もあります。教科書無償措置法は近隣市区町村でつくる「採択地区」内では同じ教科書を使うと定めていますが、地方教育行政法は各市町村に採択権限を与えているからです。竹富町の教育委員会も地方教育行政法を根拠に東京書籍版を選択しました。 国の是正要求は教育行政としては初めての措置で、地方の教科書選定をめぐって国が法的措置に踏み切るという異例の事態になると報道されています。竹富町が是正要求に従わない場合は、文科省が違法確認訴訟の提起も検討するとも言われており、地元紙などでは「教育に対するあからさまな政治介入というほかなく、文科省は是正要求の方針を直ちに撤回すべきだ」(10/3付、沖縄タイムス社説)などと批判されています。 この教科書問題が発生した時の民主党政権は、「竹富町の採択を無効とはできない」という考えを示していました。しかし、自民党の安倍政権は違法状態を認めず、竹富町に採択のやり直しを求めてきました。 愛国心を育む教育などで「美しい国」づくりを目指す安倍政権にとって、竹富町が採択を拒否した保守色の強い「育鵬社」と、すでに同町が配布した「東京書籍」の教科書のどちらが望ましいかについて、記者からの質問を受けた下村文科相は、「コメントする立場にない」と述べ、言及を避けたと伝えられています。