スキマ時間の単発バイト、なぜか「物流倉庫」がやたら人気なワケ
中高年も注目する新スタイル
スキマ時間や好きなときに仕事ができる「スポットワーク」という働き方が増えている。タイミーなどの大手スポットワーク仲介業者が加盟しているスポットワーク協会の調べでは、スポットワーク仲介業に登録している人は2024年5月末で約2200万人。2024年3月末時点の登録者数は約1500万人であり、わずか2か月で700万人ほどの増加となっている。 【画像】えっ…! これが単発バイトの「登録者数」です(計13枚) 市場調査を行っている矢野経済研究所の調べによると、2021年度のスポットワーク仲介の市場規模は496億円であったのに対し、2023年度は824億円の見込みで、2年間でおよそ1.6倍に増加している。 個人間のフリーマーケットサービスを提供しているメルカリもスポットワーク業界に参入し、「メルカリ ハロ」のブランドで事業展開を進めている。 スポットワークで働く人が急増している理由は、タイミーやシェアフル、さらにはメルカリといった ・大手が全国的にサービスを広げたことによる認知度の上昇 ・企業が副業を解禁していること も要因として挙げられる。パーソル総合研究所が2023年に調査したデータによると副業を容認している企業の割合は半数を超える 「60.9%」 である。以前は正社員として雇用されればその会社で働くしかなかったが、副業が認められれば終業後や休日などに本業とは違う業界で働いてみたい、あるいは少しでも収入を増やしたいという人が増加しているのである。 「メルカリ ハロ」の登録者500万人のうち、約3分の1の32%が「会社員・団体職員」であるという。また、年代別では ・20代:30.4% ・30代:23.8% ・40代:20.3% ・50代以上:18.1% となっており、40代以上が4割近くを占めている。自分の体調や都合に応じて働くことができるスポットワークは中高年にとっても魅力ある働き方と捉えている人が多いようである。
スポットワーカーが活躍する多様な職域
スポットワーカーが働く現場は小売店舗、カフェやレストラン、フードデリバリーなど多岐にわたるが、そのなかで物流倉庫での職域も拡大している。 「メルカリ ハロ」で勤務実績のある業界で最も多いのは物流倉庫であり、以下 ・スポーツジム/レジャー施設 ・フードデリバリー/バイク便 ・カフェ/喫茶店 ・レストラン/専門料理店 の順となっている。筆者(田村隆一郎、経営コンサルタント)は以前タイミーの幹部から「当初は忙しい時間帯が限られる外食店舗などをターゲットに考えていた」という話を聞いたことがある。しかし、その後コロナ禍となったこともあり、 「物流業界に狙いをつけたら企業側、登録者側双方とも想定以上のニーズがあることがわかった」 と語っていた。 物流倉庫の多くは人手が不足している。パート社員やアルバイトを募集しても希望の人数を充足させられないと嘆く倉庫管理者も多い。従来はどうしても人手が足りないときには 「人材派遣会社が紹介する派遣社員」 を活用することが多かった。しかし昨今は派遣社員に加え、スポットワーカーを活用する現場が増えている。派遣会社から紹介される派遣社員の場合、 「1日4時間以上の雇用が必要」 といったような契約上の縛りがある。スポットワーカーの場合は、雇用する側と働く側が合意すればそのような規定に制約されることなく自由に勤務時間を設定できる。