【中学受験相談・小6直前期】熱望校に届かないとき、本人がどう受け止めるのか考えると辛いんです|VERY
中学受験において、自分の価値観を持たせるって視点。いいんじゃないかな
K:お兄ちゃんの受験が終わったら、次男の受験が始まります。まあ、性格が真逆なんですよね。なので結構ぶつかるなと思って。次男はいわゆる「僕がやりたい」というのが強くあるわけではなく、主流っぽいもの、メジャーっぽいところに行きたがる。 オ:お母さんのその分析、面白いですね。 K:長男は、僕はこれっていうタイプ。たまたま我が家は今、受験がメジャーだから次男もそっちに行くけれど、走り出したらその子その子の道じゃないですか。逆に言うと、あの子がどう主体性を持つかなって。お兄ちゃんが行った学校に、素直に、深く考えずに行くって言いそうだし、その辺はまた逆の課題があるなって思います。 オ:お兄ちゃんが主体的に中学受験をしたけれど、それを見ていた次男はモノマネになってしまって、いつまでも主体性が出てきそうにないなって予感をお母さんがされている。でも予感されていることがすごいですよ。先ほどもおっしゃっていた「悲観的に準備して楽観的に行動せよ」ってお母さんのスタイルだと思うし。今の時点でそういう気構えができているところはお母さんとしては100点満点じゃないかなって。 K:そうですかね。ふふ。 オ:でも次男が形だけ格好をつけて、お兄ちゃんの真似をしているとき、主体的にならない時にどうしたらいいんだろうなっていう相談ですよね。 K:そうですね。長男は説明会や文化祭が好きでよく行ったんです。彼のアンテナに引っかかるものが必ずあるから、私が押し付けられなかったんです。同じ部活でも、「A校はいいけれどB校は違う」とか言う子。でも次男は、「サッカー部があればどこでもいいよ」って(笑)。文化祭に行っても「ラーメン美味しかった」で終わっちゃう。どこかで私が甘く見ているのかも知れないけれど、次男は本当にどこでも大丈夫そうな気がする。だから私の中で切羽詰まらないんです。「ここに入れなきゃ」みたいな。 オ:どこの学校でもここいいな、あそこいいなって言える子は、どこでもやっていける子。それはそれで、その子のめちゃくちゃ強みなんですよ。 K:はい、そうですよね。 オ:比較していいのかわからないけれど、お兄ちゃんの場合はセンサーを持っていて、ここがいいと感じる。主体的だし目的がはっきりしているから、大人から見て安心してしまう中学受験になるけれど、一方で、清流にしか住めない魚というか。魅力的ではあるけれど、ちょっとでも環境が変わってしまうとダメになってしまう、もろさとか繊細さを持っているとも言える。でもそれでいうと、次男はどこの池でも暮らしていける鯉みたいなものですよね。それを生かした中学受験ってどうなんだろうって。なんでもありの中学受験で、お兄ちゃんとは全く違ってくると思うんです。これからの先が読めない時代において、どんな子に育てればいいかってすべての親御さんが悩んでいると思うけれど、究極のところ、どんな世の中になっても生きていける子に育てなきゃならないじゃないですか。 K:はい、はいはい。 オ:人生にはたくさんの選択肢がもともとある。それをできるだけ狭めないように生きていくって、僕は生き方として正解だと思う。一方で、たくさん選択肢がある中で、それを保持しながら歩き続けられるほど人間は強くないんですね。だからときには自分の目標を設定しておかないと歩けなくなることがある。とりあえずあそこを目指してみようって、自分の進むべき方向性を定めることで歩きやすくなることってあるじゃないですか。次男さんにとっての中学受験はそういう教訓を得る機会にはなるのかなって気はしますけどね。 K:「それは本当にあなたのやりたいことなの?」って声かけを次男にはしていかないといけないのかも。この3年間、そういう子がどこに向かっていくかなって思っています。 オ:すごいですね。中学受験において、自分の価値観を持たせるって視点。いいんじゃないかな。次男はどこに行ってもやっていけるけれど、自分を知っていくためのプロセスになっていく。長男にとっては最初からそれが見えていた。そういう違いなんだと思いますよ。 K:ありがとうございます。なんだかいい終わりじゃなくて、いいスタートになるような気がしました。 オ:素晴らしい! 中学受験という旅路を終えたとき、次にお兄ちゃんがどういう一歩を歩み出すかをよく見ておくといいと思いますよ。そんな経験が親としてできたら、それを糧にしてタイプの違う次男にはどう寄り添うかなってことが見えてくると思います。 K:今日は一日いい気分で過ごせそう(笑)。 【 おおたさんからひとこと 】 中学受験生の親として、究極の仕上がり状況まできているお母さんでした。素晴らしいお話を聞かせてもらいました。きっと最初からこうだったわけではなくて、親子で歩んだ3年間で、お母さんも成長したんだと思います。
Profile
おおたとしまさ 教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。著書は『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)など80冊以上。 イラスト/Jody Asano コーディネート/樋口可奈子 編集/羽城麻子