ランチ特打で場外弾を放った前川（撮影・田中太一）

　「阪神秋季キャンプ」（４日、安芸） 　阪神・前川右京外野手（２１）が４日、高知・安芸で行われている秋季キャンプで驚異の打撃を披露した。フリー打撃で推定１３０メートルとされる場外弾を２発。新任の小谷野１軍打撃チーフコーチから指導を受けた“脱力打法”で本塁打を増やし、新境地を開く。 　外野フェンスの外でファンが真上を見上げて白球を見送る。驚異的な弾道。前川のバットから放たれた打球は右翼にある高さ１４メートルの防球ネット、通称「大豊ネット」を飛び越え、通路となっている坂道まで到達した。 　「いい力感で打てたので。キャンプのテーマとして小さく振らないことを練習で掲げて、スイングもだいぶ安定してきているのでいいかなと思います」 　確かな手応えに表情が緩んだ。まずはランチ特打だ。新任の小谷野１軍打撃チーフコーチと会話を交わし、打撃ケージに入った。鋭いスイングから次々と放物線を描き、防球ネットに突き刺さる。バックスクリーンにも３度ぶち当てた。４６スイングで場外１本を含む１５本の柵越え。その後の打撃練習でも場外１本を放ち、圧倒的な存在感を示した。 　力強い打撃とは裏腹に小谷野コーチからのアドバイスはリラックスだった。「振っている感覚は、（力を）抜いている感覚。変に言ったらサボっているみたいな。でも、そっちの方が打球が飛んでましたし、質も良かった。新しいことに気づけた」と、大きくうなずいた。 　秋季キャンプ序盤で得た大収穫。両手に残った感触に笑顔で話を続けた。「自然に角度も上がった。持ち上げるスイングじゃなくて普通に振って。ＨＲ（本塁打）が増えるんじゃないですか。ああいう感覚が続いたのは初めて。ちょっと染み込んだかなと思うんですけど、明日が大事かなと思います」と、つかみつつある“脱力打法”の完全習得に励む。 　１軍初完走を果たした今季は１１６試合に出場して打率・２６９、４本塁打、４２打点をマークした。「やっぱり１軍では、Ｈランプがついたらいいので。シーズン中はあまり考えていなかった」と状況に応じた打撃でチームに貢献。３３試合出場で打率・２５５、０本塁打、７打点だった昨季から格段に成長した姿を見せた。 　さらなる進化が求められる４年目の来季。レギュラーの座をつかみとるためにも、持ち味の打撃を存分に生かす。「今は１軍で１年間やって、来季にどう生かせるかが課題なので。そこはちゃんと追求していきたい」と前川。南国の地で野球人生における最大の武器を手に入れる。