存続の危機だった秋田銀線細工「おばあちゃんのアクセサリーだった」伝統的工芸品を絶やさない「TOUROU」の挑戦
PRの前に、日常的に身につけたくなるファッション性のあるアクセサリーを作り、オンラインストアで販売する方が地域貢献としても意義があるはず。そこでブランドの立ち上げを閃きました。
■伝手がゼロの状態から職人一人ひとりにアプローチ ──ブランドの立ち上げにあたって、まずされたことは? 小川さん:一緒に制作をしてくれる職人さんを見つけることから始めました。伝手がないうえ、職人さんみずからが情報発信もあまりされておらず、観光協会のサイトに掲載されていた業者一覧から連絡先を見つけては電話やメールをしました。私は秋田で生まれ育ったものの、今はファッションのフリーランスPRという肩書。相手からしたら素性のよくわからない人間でしょうし、こちらの意図もうまく伝えられなくて難航しました。
そんなとき、制作をお願いすることになる房工房の佐藤さんを偶然インスタグラムで知ります。佐藤さんの作品は緻密でアート作品のよう。すごく素敵なんです。DMを送ったら、すぐにお話できて「おもしろそうだから一緒にやりましょう」と一緒に制作をしてもらえることになりました。
■「TOUROU」商品は作品。職人さんを守るためにも完全受注生産に ──佐藤さんと組むことになって、そこからはどう進みましたか? 小川さん:佐藤さんにご協力いただくことになってからブランドを立ち上げるまでは、2年ほどかかりました。制作以外は全部私ひとりで進めるため、調べたり、教えてもらったり、試行錯誤しながらでした。ブランドに関係する費用はすべて自費で貯金を注ぎ込んだため、本業もおろそかにはできません。子どもがまだ目が離せない年齢だったので、子連れで佐藤さんの工房に打ち合わせをしに行ったこともありました。
「TOUROU」のアクセサリーデザイン案は私が出していますが、実用面や強度に関わる部分は佐藤さんと相談しながら進めています。デザインのアドバイスもしてくれますし、佐藤さんがかなり寄り添ってくださるので、二人で作り上げていく感覚です。手作業で丁寧に作り上げる伝統工芸品のため、サンプルができるまでに2~3か月ほどかかります。サンプルができても修正を重ねるので、販売までに時間が必要です。マイペースに進めざるを得ませんでしたね。