「核基盤同盟」を結んだ尹錫悦式安全保障…米国が韓国軍を掌握していく可能性も(1)
[ハンギョレS] ムン・ジャンリョルの安保多焦点 従属深まる軍事主権 軍事従属を規定した2件の文書 韓米核指針、韓米日協力覚書 米核資産の展開がもたらすリスク 核の仮面を脱いで、新冷戦から抜け出すべき
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は歴代のどの政権よりも強く、一貫して韓米同盟と韓米日協力の強化を進めて来た。7月に採択された二つの文書は、そのような「努力」が実を結んだ結果と言える。問題はそれらが韓国の軍事政策の自律性を大きく損ない、さらには大国に対する「従属」を制度化していることにある。 一つ目の文書は「韓米朝鮮半島核抑止・核作戦指針」(以下「韓米核指針」)だ。韓米国防省は昨年4月の首脳会談とワシントン宣言に基づき、次官補級核協議グループ(NCG)を設け、今年6月までの間に3回にわたる協議で「韓米核指針」を完成した。同文書は両国の国防省間の署名を経て、7月11日にワシントンで開かれた韓米首脳会談(共同声明)で「承認」を受けた。 「韓米核指針」の主な内容は「韓米一体型拡大抑止」協力の強化であり、米国の(朝鮮半島での)核作戦を韓国の通常戦力で支援するというものだ。ここでの「支援」(support)は、「核兵器と通常兵器の統合」(CNI:Conventional Nuclear Integration)を通じて行われるという面で、大きな意味がある。大統領室の説明によると、核と通常兵器の統合による北朝鮮の核への対応は「朝鮮半島における核の運用において、韓国の組織・人材・資産が米国と共にする拡大抑止へと進化」したものだ。尹錫悦大統領も7月16日の国務会議で、「韓米同盟は名実ともに『核を基盤とする同盟』へと確実に格上げされた」と評し、「米国の核資産に朝鮮半島での任務が特別に配分された」ことを明らかにした。 ■戦域レベルの核訓練が定例化する恐れも 「韓米核指針」どおり核および通常兵器の戦略企画を韓米が「きちんと」遂行するためには、従来の核協議グループの拡大は言うまでもなく、韓国の国防全体および軍事体系を見直す必要がある。国防の中心である軍事力の建設を核抑止および核作戦の遂行に合うよう進めなければならず、これは重要な兵器体系の獲得において新たに考慮すべき要素になるだろう。先端兵器の導入は当然、米国のものに限定される。「一体型」を掲げていることから、韓米同盟体制は米国中心性と主導性がより一層強まるだろう。また、「核を基盤とする同盟」を掲げていることから、合同作戦計画も核作戦を含む核戦争計画への変更を余儀なくされるだろう。 一方、米国にとって、「韓米核指針」はリップサービス以上の実質的な「負担」がほとんどない。核協議グループは、米国の戦術核兵器が配備された一部のNATO国家の「核計画グループ」(NPG)とは質的に異なる。いくら「核企画」という単語を使っても、米軍の資産が韓国地域に配置された核兵器を装着して作戦を開始しない限り、韓国軍の先端通常兵器は、外部から武装して朝鮮半島に展開してくる米軍の戦略資産に対し、円滑な作戦遂行を保障し防護を提供する任務しか果たせないからだ。 米軍の核資産の一部を朝鮮半島の任務のために排他的に割り当てることも、軍事的観点からすると、不合理であり不要だ。米国本土から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)が平壌(ピョンヤン)に飛んでくる時、飛行経路の大半は中国北京を目標にするのと変わらない。戦略爆撃機と潜水艦発射弾道ミサイルに装着する核弾頭に「朝鮮半島用」とラベルを付けることも愚かなことだ。要するに、米国は義務を追加することなく、戦略的利益だけを手に入れたわけだ。 「名実共に核を基盤とする同盟」を実現するためには「核戦争演習」が欠かせない。これまでの韓米合同訓練も核戦争演習だという批判はあったが、今後の合同作戦計画に核作戦が具体的に含まれれば、世界で類例のない「戦域(theater)レベルの核作戦演習」が例年施行されるだろう。米国は、この演習で思う存分、自身の核戦略資産を運用しながら、韓国に対するコミットメントを誇示すると同時に、韓国軍に対する掌握力を強化していくだろう。 (2に続く) ムン・ジャンリョル|元国防大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )