「なにより経済」 2024年、3つの選挙を振り返って
対する石丸伸二は街頭演説で「僕は経済学部を出て、大手都市銀で働いてきたので、経済のことをよくわかっている」(大意)とさかんに訴えていた。僕などは、トップクラスの大学の経済学部を出て銀行に勤めていれば、実際の経済をわかっているという説明には素直にうなずけない。ただ、石丸伸二が、自分に投票してくれたら経済を好転させられると力強く訴えたことは確かだった。実際、都知事の椅子にはこれまで芸能・芸術分野から輩出された人材が座ることが多かったが、これに対して、石丸伸二は、自分のキャリアを使って、経済こそが問題なんだというメッセージを発したわけである。 ■経済問題にフォーカスした国民民主党と、貧困とは無縁のセレブが推したハリス氏 経済問題をさらに具体的な政策として押しまくったのが衆院選の国民民主党だった。「政治とカネ」というスキャンダラスな話題はさらりと流しつつ「手取りを増やす」という明確な減税政策を打ち出して議席数を4倍にした。さらに、玉木雄一郎代表は「手取り増やすからね」というフレーズを使用することが多かった。この「ね」が効いた。「手取り増やすからね」は、年長者が若い世代に向けてメッセージを発しているというニュアンスが色濃く出ている。経済成長の鈍化は特に若い世代にとっての「痛み」につながり、彼らの未来を暗くする。選挙結果の解析結果を見ても、若い票が国民民主党に流れているのがわかる。 アメリカ大統領選では、数々のセレブたちがハリス支持を表明した。ビヨンセ、テイラー・スウィフト、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロと枚挙にいとまがないのだが、彼らはすべて豪邸に住んでいる大金持ちである。貧困の痛みなどとは無縁の人々だ。これら超リッチな人気者が、明確な根拠もなくハリス支持を表明するたびに、マスコミは風がハリスに吹いているかのようなニュアンスの報道を続けてきた。しかし、副大統領としてさしたる実績もなく、予備選を勝ち抜いてきたわけでもなく、黒人であるからとか女性であるからと言うだけの理由で、いわば「ぽっと出」のカマラ・ハリスを、「こうなったら彼女を押すしかない」という党内事情で持ち上げていることは明らかだった。すくなくとも、「トランプか、ハリスか」で揺れている有権者の中には、そのような視線で見ているものが少なくなかったはずだ。