高まる中東情勢の緊迫化で原油高、米国株大幅下落に
ホルムズ海峡の封鎖が意識されるか
イラン革命防衛隊の海軍司令官は、「敵がわれわれを妨害するならば、ホルムズ海峡を封鎖することも可能だ」と主張している。ホルムズ海峡の封鎖が意識されると、中東地域からの原油の供給に甚大な打撃が及ぶとの観測から原油価格の急騰を招きかねない。それは、世界の物価の安定回復を妨げるとともに、景気の下方リスクを高め、スタグフレーション的な経済環境を作り出すだろう。 イスラエルとガザ地区の紛争開始から半年が経過したこのタイミングで、中東の地政学リスクが世界経済と金融市場を大きく揺るがすリスクが大きく顕在化してきた。 そして、原油価格の上昇は、物価高に対する米国民の不満を一層高めることになり、11月の大統領選挙ではバイデン大統領に不利に働くだろう。 こうした環境は、追加利上げの時期を探る日本銀行にとっても、悩ましいものとなるだろう。原油価格上昇は先行きの物価見通しを引き上げ、追加利上げを後押しすることになる一方、内外経済の下振れリスクの高まりや金融市場の動揺は、追加利上げを慎重にさせる要因となるためだ(コラム「円安・原油高の物価シミュレーション:輸入インフレ・ショックからの経済の正常化を遅らせる要因に」、2024年4月9日)。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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