【大学トレンド】広がる大学1年生からの「職業体験」 大学の単位に認定も、インターンとの違いは?
選考ではないので、気軽に質問
大学の授業として行うもう一つの狙いは、学生の視野を広げることです。 担当教員は学生の専攻や資質、希望を見て企業とのマッチングを行い、製造業や金融業、コンサルティング会社など、さまざまな業種の企業に学生を派遣します。教員に勧められて、最初は考えていなかった企業に行く学生もいます。 学生・キャリア支援センターの高崎美佐講師は、「最初の希望とは異なる企業に行っても学べることがあり、この業種もいいかもしれないと視野が広がることがあります。視野が広がれば進路の選択も広がります」と話します。 対象となる1・2年生はまだ就職を意識していない学生が多く、「働くとはどういうことなのか、わからないので体験してみたい」という学生が多いそうです。企業名もよく知らないままに希望を書き、エントリーシートを作成する経験も初めて行っています。 インターンシップは大学3・4年生が就活の一環として参加しますが、1・2年生の就業体験にはどんな意味があるのでしょうか。 「3・4年向けのインターンシップは、企業が優秀な学生を採用する目的で行う場合がありますが、1・2年生向けは基本的にそういうことはありません。企業に選考される立場ではなく職場にいられるので、気を使わずに質問したり、話したりすることができます。この違いは大きく、就活前にこのような経験ができたのはとても貴重だったという学生が多いです」(高崎講師)
働く経験から大学生活を見直す
実際にどんな成果が上がっているのでしょうか。 「大きく成長して帰ってくる学生が多いです。コミュニケーションが苦手で大丈夫かなと思っていた学生が、自信を持って話せるようになったケースもあります。『常にリーダーシップを発揮する、キラキラした大学生じゃなくても大丈夫なんだ』ということを発見する学生もいます」(高崎講師) 学生からは、「自分の強みや弱みを客観的に見ることができる機会はこれまでなかった。自分では気づけないことに気づけた」「社会に出て働くことを見据えて、どんな学生生活を送るべきか考えるようになった」「今の自分が学びたいことや、興味関心を持っていることを学ぶことが大切であり、将来の自分に役立つことがわかった」「働く際に大事なことは仕事内容だけではないことを知ることができた」といった感想が寄せられています。 大学生の人間関係は先輩・後輩と先生、アルバイト先など、限られることが多いですが、企業には年齢も経歴も家族構成もさまざまな人がいて、ロールモデルとなる人に会える機会にもなります。工場、研究所などいろいろな仕事の現場を見ることができ、視野が広がります。 企業側からは、「フレッシュな学生が入ってきて刺激になり、改めて職場について考えた」「若い社員が人を指導する経験ができた」といった声が届いています。 高崎講師に、この授業を通して学生に期待することを聞きました。 「働くことを経験することで、自分や企業について新たな発見をしてもらえたらいいなと思っています。派遣先の企業から帰ってきた多くの学生が言うのは、『勉強を頑張りたい』ということです。企業ですごいと思う人たちに出会い、他大学の学生とも一緒になることが大きな刺激になっているようです。働くとはどういうことかを知り、自分も楽しく、社会にも貢献できる人になってほしいと思います」 では、これから大学生になる中高生に向けて、保護者にできることはあるのでしょうか。 「これからは仕事も家族も当たり前に持てる社会にしていくことが大事です。男性が家事や育児をすることも、女性が一生食べていける仕事を持つことも、当たり前だということを念頭に置いていただきたいと思います」(永瀬教授)
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