【特集・里山WEEK】竹を生かす 竹林整備の輪を広げる元船頭
テレビ信州
今週は里山について考え、理解を深めるテレビ信州「里山WEEK」。 27日は放置竹林から里山を守る取り組みです。 竹を生かし、楽しみながら整備する、その活動の輪を広げているのは元船頭の男性です。 飯田市伊豆木にある国の重要文化財・「旧小笠原家書院」の裏山。この日、竹の伐採が行われていました。 曽根原宗夫さん 「日が当たらないもんで、ほかの植生が何もない。」 曽根原宗夫さん60歳。放置竹林の整備や活用に取り組むNPO法人「いなだに竹Links」の代表です。 この日はメンバー3人で作業。 伐採した竹は斜面に積み上げて土留めとして活用します。 所有者は美しい景観を取り戻したいと市を通じて依頼しました。 依頼人 「竹Linksさんの力とかがないとやっぱり全部の環境をきれいに見せるというのは不可能」 曽根原宗夫さん 「里山を整備するとこういうご褒美がいただけるというね。美しい」 放置された竹林では、太陽の光が遮られ植物の多様性が失われるほか、竹はもともと根が浅いため土砂崩れの原因にもなりやすいといわれています。 県内の竹林はおよそ1500ヘクタール、諏訪湖よりひと回り大きい面積に匹敵します。その竹林の6割が上伊那・南信州地域にあります。 曽根原さんが竹林に着目したのにはあるきっかけがありました。 曽根原宗夫さん 「船頭をやっていた、舟下りのコースのメインに当たる鵞流峡という渓谷。そこがある時から気が付いたらごみの不法投棄のメッカになっていたお客さんと一緒にごみを見ながら下っていくのが心苦しいんですよね」 33歳からの24年間、天竜川で舟下りの船頭をしていた曽根原さん。 川沿いのごみをなくすためには景観を良くすることが必要だと考え12年前から仕事仲間などと一緒に天竜川沿いの竹林整備を始めました。 そして3年前、船頭の仕事を辞めて、「竹Links」を設立。 依頼を受けて整備をしたり、子どもたちへの環境教育などに取り組むほか、竹の活用にも力を入れています。 豊丘村の道の駅で販売されているのは曽根原さんたちが手掛けたメンマ。 道の駅 南信州とよおかマルシェ三浦裕樹副支配人 「入荷するとすぐに売れてしまう。5,10個まとめ買いする方もいらっしゃるので人気商品の一つですね」 春先に収穫した孟宗竹を飯田市の漬物製造会社に委託し 竹本来の甘みを生かした味わいに仕上げています。 購入した人は 「一回食べてみたいと思っていた。ラーメンに乗せたりちょっとしたおかずで食べたい」 曽根原宗夫さん 「ある意味資源として捉えれば種をまかずに勝手に出てくる魔法の作物ととらえた方がいいんです。人々の暮らしに寄与する関係性を竹と作っていけば、必要とされるものになっていけば邪魔者にならないという」 このほか、土壌改良剤として使う「竹炭」を販売したり、整備活動後に竹網バーベキューをしたりと、さまざまなアイデアで活用法を見出しています。 この日、飯田市の円悟沢川流域での整備に参加したのは全国規模の学生ボランティア団体の大学生たち。 曽根原さん 「うまいね、うまいうまい!」「才能あるね」 飯田市の企画で4年前から「竹Links」と学生団体が一緒に活動、関西や関東などから定期的に学生が足を運んでいます。 飯田市・結いターン移住定住推進課 小原和也さん 「継続的に飯田に来るきっかけになったりとか飯田を好きになって将来的な選択肢に上ってくるきっかけになっているのかと思います」 切っても再び生える竹は継続的な整備が欠かせません。 より多くの人に楽しんで参加してほしい…それが曽根原さんの根底にある思いです。 曽根原宗夫さん 「活動の一番のエネルギーは楽しさだと思っている。また来たい、楽しかった、おいしかったってなるとポジティブなイメージになる。そうやって仲間を増やしていった方が、希望とか夢がありません?」 千葉県から 「元々暗かったところが竹を切って、明るくて火が入るのが目に見えてわかるのでうれしいし達成感もあって嬉しいです」 京都府から 「活動が4回目でこの活動自体がすごく大好きで地域の方たちの温かさだったりこのいなだにの竹を切る活動の純粋な楽しさが本当に魅力だと思って参加した」 広がる竹の可能性と、活動の輪。 その先に見据えるのは人々の暮らしに密着する里山です。 曽根原宗夫さん 「伊那谷の里山が前よりもっとにぎやかになっていて地元の子どもたちも山の中で遊んでいたりとかっていうような景観になっていってもらいたいと思う」