ブッシュで誤球をして優勝戦線から離脱した河野祐輝

＜JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品　最終日◇24日◇西那須野カントリー倶楽部（栃木県）◇7036ヤード・パー72＞ 【動画】石川遼がすべてをさらけ出す　ボギーを打たないマネジメントとは？ ラウンド中に涙がこぼれ落ちそうになった。2位に2打差をつけて首位から出た36歳のカッピーこと河野祐輝（こうの・ゆうき）は、14番のバーディで首位タイに並びながら15番で誤球をするなど『9』を叩いて優勝戦線から離脱。順位は一気に19位タイまで落ちて「16番で泣きそうになった」が、歯を食いしばて17番、18番連続バーディで9位タイに食い込んだ。2015年の「日本プロゴルフ選手権」以来のトップ10入りには笑顔を見せた。 「カピバラに似ている」と先輩プロの諸藤将次がつけたあだ名はカッピー。ゴルフ界で愛される“カピバラ”はプロ17年目。2013年の「日本プロゴルフ選手権」以来、2度目の最終日最終組は自身初の単独首位。「朝の練習場から緊張していた」と優勝争いの主役に加えて、初めて一緒に回る石川遼の存在が大きかった。 「ギャラリーがめっちゃおる、みたいな。それがすごく緊張しました」。慣れない大勢のギャラリーに囲まれて普段どおり体が動かず、精一杯クラブを振った。前半はバーディを奪えず、ボギー1つとスコアを落としてハーフターン。2つ伸ばした石川に逆転された。 しかし、石川がボギーとした11番パー5で、河野はカップまで3メートルに2オン成功。「ショートしちゃったので、プレッシャーを与えきれなかった」と惜しくもイーグルは逃したが、この日初バーディ。そこから息を吹き返し、14番パー3で取り戻して、石川に追いついて首位に返り咲いた。 「（14番で）首位に立ったのは分かっていました。そこから遼クンと競り合って、楽しい優勝争いができたらいいなっと思っていたら、その次『＋5』だったんで…」 15番パー4のティショットは「ファーストカットのようなところ」に止まった。2打目は「フライヤーして（グリーン）奥のブッシュまで行きました」とグリーン奥に消えた。念のため暫定球を打ってグリーン奥まで行くと、グリーン近くにいた関係者から「ブリヂストン、ここにありますよ」と。腰の高さまである深い茂みの中に、カッピーが使用する“ブリヂストン”のボールがあった。 「極限状態でちょっとパニックっていて、確認すればよかったのに確認せずに打ってしまいました」。河野が打ったボールはグリーン側のラフまで運んだが、よく見ると「違う『B』のボールで、見た瞬間、真っ白になりました。誤球だって…」 そこから本球を捜索。3分以内に見つけ出しロストは免れたが「打てるライではなかった」とアンプレヤブルを宣言。誤球の2罰と“アンプレ”の1罰を加えて、2打目を打った地点に戻って打った。6打目はグリーン手前のガードバンカーへ。7打目は5メートルほどオーバーし、8打目も入らず、ホールアウトに9打を要した。 石川遼との優勝争いを楽しみにしていた矢先に確認ミスによるトラブル。「「（西山）大広がフライヤーして飛んでいるのを見ているにも関わらず、自分がフライヤーを計算しないで打ってしまった。ボールの確認も含めて、冷静ではなかった」 地獄を味わい「涙が出そうになった」が、「せっかくのチャンスなので」と“10位以内”という目標を立ててすぐに気持ちを切り替えた。 QTランキング72位で次戦以降の出場権を持たないカッピーは、10位以内に入れば7月の「長嶋茂雄インビテーショナル　セガサミーカップ」の出場権が付与される。ノドから手が出るほど、その権利が欲しかった。トラブル後は「セガしか頭になかった」。歯を食いしばり17番パー3では狭いエリアを果敢に攻めて3メートルにつけてバーディ。18番パー4も5メートルを流し込んで、この日「74」。トータル17アンダー・9位タイに滑り込んだ。 2013年に賞金ランキング33位で初シードを獲得したが、翌年には手放してしまう。以後は思うようなゴルフができずに苦しいシーズンが続いた。トップ10入りは2015年の「日本プロゴルフ選手権」で9位タイに入って以来、9年ぶり。 この日は1ホールのミスでタイトルを逃したが、手に入れた自信と経験は少なくない。「優勝争いもできたし、自分が緊張してよくない状態で戦えたのはすごく自分によってよかったと思える経験です。あとはもう1つ冷静に考えられる頭があれば、それこそまた優勝に近づけるんじゃないかなという感じです。今日はいい経験をさせてもらいました」と前を向いた。 「セガサミーカップ」は2013年に自己ベストの2位タイに入った思い入れのある大会。 「ショット自体は調子がいいし、特に洋芝が好きなのですごく楽しみ。1打1打集中できたらいい成績になるんじゃないかなと思いま」と、那須で逃したタイトルは北の大地で取りに行く。