気迫の鼓、円熟の舞 金沢おどり にし・乃莉さん、主計・かず弥さん 名妓の一景
金沢市の石川県立音楽堂邦楽ホールで開催2日目を迎えた第21回金沢おどり(同実行委員会、一般財団法人県芸術文化協会、北國新聞社主催)は21日も大入りとなった。ひがし、にし、主計(かずえ)町の三茶屋街の芸妓(げいこ)衆が織り成す舞踊絵巻の中でも、金沢の花柳界をけん引する名妓(めいぎ)による一景が来場者を引き付けている。 【写真】気迫に満ちた小鼓一調を披露するにしの乃莉さん 第六景「わたつ海(うみ)」を務めるのは、にしの乃莉(のり)さん。気迫に満ちた掛け声に続いて、小鼓が打ち鳴らされた。今年の演目は長唄「島の千歳(せんざい)」をベースにした独自の小鼓一調。時に三味線との小気味よい掛け合いを見せながら、音色を替え、打ち寄せる波のように音を紡いだ。 「90歳の声を聞いて、ようやく少し、分かってきた」と乃莉さん。芸歴70年以上。卒寿を過ぎてもなお真剣勝負の舞台に上がり、自由自在に鼓を打つ姿が観客の視線を集めた。 長唄「若菜摘(わかなつみ)」では、主計町のかず弥さんによる円熟の舞が、雅(みやび)の世界に引き込んだ。「君に若菜をすすむること…」の唄(うた)に始まり、せり上がりから公家装束のかず弥さんが登場すると、拍手が湧き上がった。 21年間出演した金沢おどりの舞台で、公家役は初めてという。重量感のある衣装ながら、動きを大きく見せて舞い、文を出し、恋に破れる姿を描いた。 唄のひがしの小千代さんは、乃莉さんと同い年。かず弥さんは「私も生きている限り頑張り、無事に舞台を務めたい」と語った。 名妓たちの円熟の舞台は金沢おどりの呼び物となっている。清水由紀子さん(77)=能美市=は、「この道に長く生きるベテランの重みのようなものを感じ、心に残った」と話した。「若菜摘」は午後1時の部、「わたつ海」は同4時の部に上演される。 金沢おどりは23日まで。素囃子(すばやし)「風流船揃(ふなぞろえ)」、舞踊絵巻「寄(よせつどう)加能(かのうの)賑(にぎわい)芸妓(はなの)舞(まい)」を披露している。 当日券はS席(指定)8500円が残りわずか、A席(自由)7500円。プラチナ席は完売した。22日は千円増。チケットは専用電話=070(3965)0540=まで。