なぜJ最年長出場記録を更新した52歳の三浦知良は引退したイチローへのメールを迷っているのか?
敬意を込めて「イチローさん」と呼ぶ盟友が、東京ドームで行われた感動的な“引退試合”を最後に45歳でユニフォームを脱いだ2日後に、自らが52歳になってから初めてリーグ戦のピッチに立った。しかも先発という巡り合わせで。日本での開幕戦へ臨む直前のイチローへ激励のメールを送っているカズは、現役引退をねぎらうメールを「迷っています」とまだ送っていないことを岐阜戦後に明かしている。 自分はボロボロになるまで、大好きなサッカーを追求できる環境にある。ひるがえって、心から野球を愛し、断腸の思いで引退を選択したイチローの心境を察し、置かれた立場の違いに思いを馳せた結果として、メールをためらわせているのかもしれない。だからこそ、シアトルに戻った盟友に届けとばかりに、これまでも、そしてこれからも貫いていく覚悟と決意を岐阜戦後に口にした。 「52歳で試合に出られることを、うらやましいと感じている人もいると思う。その意味でも自分はしっかりと準備して、サッカーに対するリスペクトを常にもってプレーしたい。もちろんピッチに立てたことは嬉しいけど今日一日で満足はできないし、今日のパフォーマンスにも決して満足することはない。もっともっとよくなることを考えて、これからも練習していきたい」 カズが「うらやましいと感じている」とした対象は、出場機会を得られない現役Jリーガーや、すでにユニフォームを脱いだ元選手だった。ただ、サッカーに限定せず、イチローを含めたあらゆるスポーツの現役や元選手に対象を置き換えても、カズが発したメッセージは十分に意味を成す。 岐阜戦でもゴール前へあわやのタイミングでクロスに飛び込むなど、見せ場を作ってスタンドを沸かせた。しかし、顔面に傷を負いながらも、放ったシュートはゼロ本。全員でブロックを作り、守備に重点を置きながら得点チャンスをうかがう。守備面のタスクは実践できたからこそ、フォワードの仕事を判断する明確な数字となる、2年以上も遠ざかっているゴールをカズは貪欲に追い求めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)