「小さな自分を探しなさい」…専門医も誤診する「複雑性PTSD」の筆者がカウンセリングで「気づいたこと」
「インナーチャイルド」を探す
また、当事者の中には発達障害と似た特性を持つ人もいるようだ。実際、私も思考のこだわりが強く、初回のカウンセリングでは発達障害の有無を調べる検査を受けた。結果的に発達障害ではなかったが、当時は極端な白黒思考や完璧主義、ルーティンや予定が変わると不安になるなど、発達障害と似たような特性が現れていた。 そうした強いこだわりが自分にあることも、私は自身では気づけず、カウンセラーからの問診に応える中で、初めて自覚した。私と同じように、認知の歪みや自分が体験している症状を「普通のこと」だと思っている当事者は、きっと多いのではないだろうか。 複雑性PTSDの治療法は、国際的にもまだ手探り状態だ。投薬治療やトラウマ体験に焦点を当てた心理療法、眼球運動によって脳の神経回路を変化させることで、トラウマを軽減することを目的とする「EMDR」など、様々な治療法があり、効果には個人差もある。 私の場合は、インナーチャイルドをケアする治療を受けることとなった。インナーチャイルドとは、誰しもの心にいると言われている“子どもの自分”だ。 その存在自体は書籍やネットを通して知ってはいたが、私は正直、胡散臭いと思っていた。2回目のカウンセリング時、カウンセラーから「目を閉じて小さな自分を探そう」と言われた時には「馬鹿らしい」と思い、インナーチャイルドが見えたように演技をして通院をやめようかと考えた。
パーツの集まりが「私」
だが、数十分ほど目を閉じていると、不思議な感覚に。心の中に突然「寂しい」という感情が浮かんできて、涙が出た。同時に、頭の中で大人の自分の声がする。「そんなこと思ってはいけない」や「そういう気持ちを言ってどうなる?」と、寂しいと感じた私を批判し、口を閉ざせようとする声が聞こえたのだ。 きっと、ひとりでインナーチャイルドワークをしていたなら、ここで心と向き合う作業は終わったはず。今の自分の声が、過去の自分と向き合うことを拒絶するからだ。 だが、カウンセリングではカウンセラーが患者の様子や感情を汲み取り、”あの頃の自分“と向き合えるようにサポートしてくれる。自分の中にはない、「心が楽になる考え方」を教えてもくれる。だから、心理学本に綴られているセルフケアを実践するのとは得られる効果が違うのだろう。 インナーチャイルドは、「パーツ」という言葉でも表現できる。私たちの中には色々なパーツがいて、それぞれには役割がある。怒りや悲しさ、真面目さなど様々な感情を持ったパーツの集まりが「私」という人間なのだ。 インナーチャイルドを癒すワークは、傷ついたパーツを探す旅である。これまで歩んできた道の中で、誰にもケアされず、自分も蔑ろにしてきた私と向き合う作業だ。