エルワン・ブルレックが国内本格上陸の〈ラーウィー〉で 新作デザインを発表|小西亜希子の北欧デザイン通信
──《ARBA Lounge Chair》について、教えてください。オフィスチェアのような、リビングチェアのようなコンテンポラリーな新作ですね。 椅子を作ることが決定してから、このプロジェクトは本当に素早く色々なことが決まっていきました。自分が培ってきたメソッドをシンプルかつ純粋に、そして幾らかのラフさも入れて表現したいと思いました。 この椅子は構造がとても簡単で、背もたれと座面を2つのプライウッドパーツで構成し、クロスさせたダイキャストのアルミニウム素材でベースを作っています。これまでのデンマークにある素晴らしい木製の家具や美しいキャンドルホルダーなどのスタイルに、もっとポジティブでエネルギーのあるカラーやディティールを加えることで新たな楽しさを出せればと。少ないリソースではありましたが、遊び心を持って実験しながら作り上げていった感じです。
《ARBA Lounge Chair》は、シンプルでありながら洗練されたデザインで、2つの成形合板パーツとクロスのように組み合わされたフラットな曲げ金属の構造、そしてダイキャストアルミニウム製のベースで構成されている。実際に座ると幅広いプライウッドの座面と背もたれを支えるV字に成形されたフラットな金属が適度にしなり、脚部はスイベル機能によって360度回転するという、機能面としても驚くほどに快適な座り心地だ。 デザイン面でも精密に作られた工業製品の存在感と、ビビッドな配色バランスが絶妙に調和しており、機能性と芸術性を併せ持つデザインを真骨頂とするエルワンの技量あってこその椅子なのだと実感させられる。
──会場ではドローイングの作品も展示されていますね。 今回のために制作したという訳ではないのですが、ペインティングとドローイング、2つの作品を展示しています。エキシビションが決まって会場の空間構成を考えた時、単なるプロダクトだけではないコントラストを作りたかったということもありました。 コンピューターコーディングを描いた作品は、常に変化し続ける世界、自分自身、そして世代ごとに異なるレイヤーで無限に広がる情報が、相互作用を通じて影響し合うインタラクティブな要素を含んでいます。混沌としたカオスの中にバランスを見出した形というか。これは、メタルを溶接して繋いでいく作業にも似ていて、コーディングも表現するためのツールの一つと言えます。問題の解決策を模索するようなプロセスで、あまり考えすぎるよりも作ることに没頭していますね。ただ、これをアートとは捉えていません。この作品も展示が終わったら丸めてどこかに保管されるようなもので、マップ(地図)みたいな感じ。たった今、ふと思いついたのですが、今後はこれらの作品を「マップ」と呼ぼうと思います(笑)。