大きな地震が起きるとなぜ「流言」が広がるのか?
実は少し余裕が出始める時期に起こりやすい
実は、流言が起こりやすいのは不安のピークを越した時からとの説があります。心に余裕が出始める時期で、避難所での会話も活発化してくるのです。そうなると話題にのぼるのが、救援物資や義援金の分配と言われています。地震に怯え、その日その日のことしか考えられなかった生活から日常生活を取り戻すために動き始め、被災者は物や金銭への援助に関心が高くなります。「~~だといくら支援してくれる」「救援物資は××でもらえる」などの真偽不明な情報がどうしても発生してしまうのです。 そのときに有効なのが、役場などの情報を張り出した掲示板です。そこで現状や今後の見通し、救援物資の配布状況などについて頻繁に提示することで情報不足を防ぎ、不確かな言説が広まる原因を排除します。橋元教授によると、特に復旧状況、救援物資の集積配布は重要で、仮に部分的でも現状を伝えることが大切だとしています。「基本的には心理的ニーズが減れば流言はなくなります。行政やマスメディアが積極的に情報提供をし、不安を低減することが非常に重要です」ということなのです。 今回の熊本地震では、大西一史熊本市長がTwitterを活用して被災状況や救援物資、避難情報などを逐一伝えています。政府も各省庁による被災者向け情報をまとめて発信するTwitterの公式アカウントを開設しました。「政府応援情報」として、生活インフラの復旧状況や各種特例制度などを提供しています。橋元教授は「これらの公的機関の情報発信は非常に有効です」と新たな取り組みを歓迎する一方で、「非常に狭い村の地区単位などの情報は、本来は町役場レベルで発信すべきことです。ただ、そのようシステムはまだ整っていないように思います」と課題を挙げました。 地震発生から2週間。自治体やメディアは、このような流言発生のプロセスを理解したうえで、できるかぎりの情報発信に努めることが必要なようです。
--------------------------- ■重野真(しげの・まこと) 地方紙在籍中には支局/社会部に所属し、事件事故や学術文化などの報道に携わる。現在はフリーランスの記者として、雑誌・ウェブサイトで硬派記事を執筆するほか、ネットニュースの編集も手掛けている