大きな地震が起きるとなぜ「流言」が広がるのか?
避難先でSNS情報に依存しやすくなる被災者
一方で、ネット社会の特徴に関しては「必ずしも情報不足が理由ではなく、逆にいろんな情報が氾濫するがゆえに流言が広まることもある」と話します。たくさんある情報の中から、どれが本当なのかとその真贋を判定する形で広まるそうです。さらに「ネットでは匿名で発信できます。その一方、ネットでは『自分の情報を認めてもらいたいという自己顕示欲や承認欲求』の強さが増しやすく、どんどん無責任で興味本位のセンセーショナルな情報が氾濫しやすい」(橋元教授)との傾向もあるようです。 震災における被災地では、停電でパソコンが使えない状況になることが多くなります。そうするとスマートフォンなどのモバイル機器の方が使いやすく、情報収集やコミュニケーションの中心がモバイルとなるのです。モバイルはソーシャルメディアとの相性が非常に良く、そうなると被災者はSNSの情報に依存しやすくなります。 一方、モバイル機器の画面は小さいので、説明の少ない短い内容でのコミュニケーションになりがちです。人間は、言葉が短く曖昧であればあるほど、自分の枠内で解釈する嫌いがあり、早とちりや誤解が生じやすい原因ともなるのです。 橋元教授は「東日本大震災でもTwitterなどのSNSで広がっていきましたが、今回はそれ以上にみんなが利用している。流言に限らず、以前にも増して情報の拡散力は増していると思う」と話します。
公的な情報を提供して流言の“根本”を絶つ
このような流言を防止する方法はないのでしょうか? 橋元教授は「広まっていくものを途中で阻止するのは非常に難しい。簡単ではありませんが、原因を断つのがもっとも正当だと考えます」との見解を示します。つまり、行政や信頼あるメディアなどの機関が積極的に情報提供をすることで、ある程度は防げると考えているのです。 「現代では自治体によるSNS発信も一つの有効な手段になるでしょう。ただネット環境が充実している自治体はまだ少ないので、そこは課題だと思います。すぐにできるとしたら、ソースがきちんとした情報を持っている自治体職員が、上司の許可を得た上で、救援物資や義援金などについて個別的に発信することではないでしょうか」(橋元教授)。 これには情報源を明確にすることが重要だとも指摘します。「~~の情報について知りたい人は役場××課に連絡してほしい」「流言と思われる情報を聞いた人はその真偽について△△に確認してほしい」など、正確な情報発信ができる機関の連絡先を明記するのです。信頼ある機関への連絡を促すことで、曖昧な情報の流布を低減させられます。 また、一度広まった流言の否定は、自治体などの信頼ある機関でもおすすめできないようです。「否定しても火に油を注ぐことが多いのです。『あれは意図があって否定している』となり、さらに流言を発生させる可能性があります」と、その理由を語っています。