「東大生は優秀ではありませんでした」生活保護世帯から数学者になった男が感じた同級生との強烈な“ずれ”とは…「この事実に私は落胆し、怒りを覚えました」
生活保護世帯から東大で博士号をとるまで #2
生活保護世帯から数学者になる――東大という日本最高峰の学力を誇る大学に入ったとて、数学者になるまでの道は険しい。まして生まれた環境が絶望的ともいえるなかで、その栄光を掴んだR.Shimada氏は、同じ東大で学んだ同級生たちをどのように見ていたのか。R.Shimada氏への聞き取りを通じてみえた“東大”とは。 【画像】東大学部時代の学友について語るR.Shimada氏
「東大生は優秀ではありませんでした」
生活保護世帯から東大を目指したR.Shimada氏の青春時代は、周囲との差を否が応でも意識せざるをえないものだった。 「東大を志したのは15歳のときです。地元でトップの公立進学校へ進学したものの、そこでも私のスタンスは理解されませんでした。 たとえば修学旅行へ行くためには、10万円という金額が必要でした。アルバイトなどで工面するにも相当数の時間を必要とするため、勉強時間を削ってまで参加する意義を見いだせず、行かない選択をしました。あとから聞いた話では、『ガリ勉だから修学旅行も来ない』と言っていた同級生がいたとか。 このように、他の同級生と抱えている事情が違うことを理解していたので、当時から自分も同じ高校生でありながら、『まだ彼らは高校生だから』と思うことでやり場のない怒りを逃がしていました。もちろん、恵まれた環境にいながらそれに無自覚な同級生たちを憎んだこともあります」 参加しなかった修学旅行に組み込まれていたプログラムには、“東大見学”があった。だが皮肉にも、同級生のなかで東大合格を果たしたのはR.Shimada氏のみだったという。 東大は説明不要の日本の最高学府。必然的に、将来は官僚など国の中枢で働く学生も多い。 東京大学学生生活実態調査(2021年)「問39.あなたの現在の生計を支えている方の昨年(2021年1月~12月)の年間税込み収入(世帯年収)はどれくらいですか?」という問いについて、平均936.6万円という数字が出ている。翻って独立行政法人 労働政策研究・研修機構が行った調査では、2021年における日本の平均世帯年収は545万円となっており、平均的な東大生が経済的に裕福な暮らしを享受している様子が見てとれる。 彼らとのキャンパスライフは、R.Shimada氏にとってどのようなものだったのか。 「非常に簡単に言えば、想像していたよりも、あるいは期待していたよりも、だいぶ東大生は優秀ではありませんでした。彼ら彼女らとは、同じ国で育ったとは思えないほど生育環境に隔たりがあり、他者や社会の状況に対する洞察と思慮があまり感じられませんでした。 率直に言って、自分のことにしか関心がないのではないかと思える言動をする同級生は多かったと思います。この事実に私は落胆し、怒りを覚えました」