早稲田大教授「石破政権、外交・安保分野では特別な変化はない見込み」
【インタビュー】アレクサンダー・ブフ|早稲田大学教授
日本の石破茂新首相が4日、就任後初の国会での所信表明演説で、新政権の政策の下絵を公開すると、早くも「カラーのない政権」という指摘が出てきた。野党側からは「スカスカの所信表明」(立憲民主党の野田佳彦代表)という批判に加え、「かんでも味がしないガムのようだ」(国民民主党の玉木雄一郎代表)という酷評まで出てきている。特に、北東アジア全体に影響を及ぼすことになる日本政府の新たな外交・安全保障政策については、方向性すら不明だと評されている。 これについて、早稲田大学のアレクサンダー・ブフ教授(国際関係学)は5日、ハンギョレの取材に応じ、「新政権の政策の方向から石破首相の発言をみると、外交・安全保障分野では、現在と特に大きな変化はないとみられる」と説明した。ブフ教授は「国防予算増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)保有のための『安保3文書改定』のような大きな問題は、岸田文雄政権期にすでに整理された」として、「予想できない危機が発生しない限り、石破首相の外交・安全保障の課題は、以前と同様の路線、すなわち『同志国との関係強化』に向かうものとみられる」と述べた。 石破首相は「国防は生涯の課題」と語るほど安全保障に関心が強く、「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」創設のような主張もしてはいるが、日本の安全保障政策が大きく変わる余地は多くないとみられるという指摘だ。 ブフ教授は「アジア版NATOの創設」の主張には「現実性がない」として一線を引いた。この問題については、自民党や政権内の外務省・防衛省でも「(首相就任前の)幻想」とみる問題意識があったといわれている。ブフ教授は、在日米軍に関する協定である日米地位協定の再検討の主張についても、「首相が強い意志を示した事案だが、米国が同意する可能性が低いなど、多くの課題がある事案であり、現段階では不透明性が高い」と述べた。 中国についても、日本と軍事的緊張がさらに高まる可能性は小さいとみている。ブフ教授は「日本政府が意図的に中国を刺激する理由はなく、代わりに、韓国・インド・ベトナム・オーストラリアなどとの同盟を通じての安全保障強化に注力するだろう」と分析した。首相選出前から米国との同盟強化を強調してきた石破首相は、日米同盟をより緊密に維持する可能性が高い。 ブフ教授は韓日関係については「石破首相は、歴史問題では過去の日本がアジア諸国に悪い行いをしたという責任感を強調してきた人であるだけに、韓国政府としても負担は少ない」としたうえで、「軍事オタクと呼ばれるほど安全保障問題を重視する石破首相の立場としては、中国と北朝鮮をけん制するためにも、韓国とは(友好的な)関係を維持する必要がある」と説明した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と岸田前首相の間で築かれてきた友好関係を揺さぶる理由はないという分析だ。これに先立ち、石破首相は所信表明演説で「日韓が緊密に連携していくことは、双方の利益にとって極めて重要」であり、「岸田首相が尹大統領との間で築いた信頼関係を礎に、日韓両国の協力をさらに堅固で幅広いものとしていく」と強調した。これについてブフ教授は「過去の日本の誤った植民地政策を認め、被害国に相応の配慮はするが、代わりに現在の日本の安全保障を整えるという戦略」だと解説した。ただし、石破首相がこれまでの日本政府の方針を飛び越え、過去の歴史に対する反省を表明できるかどうかについては疑問視する声が多い。 ブフ教授は2006年に英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号を取得した後、日本の筑波大学やニュージーランドのウェリントン・ビクトリア大学などを経て、現在は日本の早稲田大学で東北アジア情勢や韓日関係、日ロ関係などを研究している。ロシア生まれだが、若い頃にイスラエルに移住し、その後ニュージーランドにも長く住んだ。日本で長期にわたる研究活動を行い、韓国で独島(ドクト)問題などを研究した経歴を持つ。 東京/文・写真 ホン・ソクジェ特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )