「吉田調書」報道 朝日新聞が謝罪「記者の思い込みとチェック不足が原因」
朝日新聞は11日、福島第一原発事故で、現場の指揮をとった吉田昌郎所長の証言をまとめた「吉田調書」をめぐる報道について会見。「誤った部分があった」として謝罪し、一連の報道の経緯について説明した。 【アーカイブ動画】朝日新聞が「吉田調書」報道で誤り認め謝罪 会見には木村伊量(ただかず)社長、編集担当の杉浦信之取締役らが出席した。
■「吉田調書」報道
朝日新聞は「吉田調書」を独自に入手し、5月20日付の朝刊で「3月15日朝、福島第一原発の所員の9割が吉田所長の待機命令に違反し、福島第二原発に撤退した」との第一報を報じた。しかし、その後の社内での精査の結果、所員が逃げ出したかのような印象を与えた記事は間違いだったと判断。「命令違反で撤退」と表現した記事を取り消すとした。 木村社長は「『吉田調書』報道は、福島原発事故の教訓を引き出し、政府に調書の全文公開を求めるものだった。調書は朝日新聞が報道しなければ世に知られることもなかったかもしれない。誤った内容の報道になったことは痛恨の極み」と謝罪した。 誤った記事を出してしまった原因については「現時点では、記者の思い込み、チェック不足が重なったものと考えている」とした。 今回の朝日新聞の報道をめぐっては「意図的だったのでは」という批判もある。それに対して、杉浦氏は「意図的ということはない」と否定。調書が「非常に秘匿性の高い資料」だったため、直接触れる記者の数を限定していたことや、福島事故の取材を続けている専門的な記者らが担当だったため、「取材班以外の記者やデスクらの目に触れる機会も少なく、チェックが足らなかったと判断している」と説明した。 記者からは「命令違反」をめぐる裏付け取材についても質問が相次いだ。杉浦氏は、テレビ会議でのやり取り、独自入手した資料などから、「吉田所長の命令があったのは事実と考える」との認識を示した。その上で「所員が命令に意図して背いて福島第二原発に撤退したという事実はなかった。命令が行き届かなかったり、混乱の中で命令を聞いた人たちまですべて第二原発に撤退したという印象を与える記事が間違いだった」と述べた。 「当時の所員に話を聞いたのか」との問いには、「取材が極めて不十分だった。取材では命令を聞いたという所員の話は聞けなかった」と釈明した。 こうした記事の誤りは8月末以降の取材班以外の調査で判明したという。