「トラック運転手の給与」はなぜ簡単に上げられないのか、意外と知られていないネックになっていること
例えば、燃料価格の変動に伴うコスト増減を変動費として設定する「燃料サーチャージ」の導入が挙げられる。また、荷物を運んだ後の「帰り便」は空車で戻るケースが多いため、依頼主側で帰り便の積荷を斡旋したり、他の依頼主企業を紹介したりすることで、物流事業者の利益を向上させる事例が出てきている。 これらの事例はほんの一握りである。全体の傾向で見ると、運賃は上がらず、物流事業者は依然として厳しい状況にある。燃料費や車のメンテナンスコストなどが高騰している中で、運賃が上がらない場合、こうしたコストは実運送事業者が負担することになり、経営を圧迫する。
結果、依頼主が運賃を値上げしたとしても、物流事業者の運営コストに吸収されてしまい、十分なドライバーの給料にはつながっていないという声もある。 ■ITの活用でドライバーの労働時間を削減 こうした中、弊社も参加した秋田県トラック協会や、国土交通省が5月に行った「首都圏向け青果物の物流効率化 実証実験」は、持続可能な運送体系の構築が、運賃適正化につながった取り組みの一例である。 秋田県で生産される青果物の8割以上が首都圏で消費されおり、トラックによる600kmを超える長距離輸送が行われている。このため、ドライバーの長時間労働が問題となっていた。
実証実験では、ドライバーの役割分担やIT活用によって、トラックドライバーの労働時間を20%削減できた。これまで1台のトラックが行っていた秋田県内での集荷と、秋田県から首都圏への幹線輸送を分離して別のドライバーが担当することで、ドライバー1人あたりの労働時間を減らした。また、トラックの到着時間を事前に予約することで、待ち時間を短縮するITサービスも活用した。 検討段階では、トラックの位置情報をGPSで確認し、配送時間の内訳を詳細に把握。それにより、ドライバーが早朝から集荷を行い、荷物をまとめる台(パレット)に積み上げる業務外の作業も行っていたことが判明した。