ミスター慶応出身&フェンシング元日本代表の25歳俳優が強烈。“モラハラ暴力夫”に恐怖
役柄という上着を重ね着していく
実際、BLドラマウォッチャーである筆者からしても『みなと商事コインランドリー』は相当印象に残っているが、『春になったら』(関西テレビ・フジテレビ、2024年)で結婚式場のプランナー役でしっかりスーツを着るスタイルを見ると、一瞬でイメージが更新されてしまう。 スラックスをすらりとはいて半袖から長い腕を伸ばしていた甘酸っぱい高校生役はもう完全に過去の美しい記憶。西垣匠は以前からずっと学生服ではなく、大人の着こなしのスーツが似合う人に違いなかったと錯覚さえ。 単純なビジュアル変遷から考えると、半袖の学生服からのぞく素肌をすっぽり包み隠したスーツスタイルへの衣替えだ。この衣替えによって彼は新たな役柄という上着を重ね着していく。
恐怖のモラハラ彼氏
重ね着するごとに役柄の厚みがうまれる。高橋ひかる主演の不倫(的自我の目覚め)ドラマ『顔に泥を塗る』では、高橋扮する主人公・柚原美紅に対して倒錯した愛情で支配しようとする恐怖のモラハラ彼氏・結城悠久を演じている。 悠久役は弁護士という固い仕事を職業としている。これは言わば、スーツスタイルで武装する西垣が得たさらなる鎧だ。最初は彼女思いの愛情深い彼氏に見えるのだが、第1話でジェンダーフリーな高倉イヴ(木村慧人)に真っ赤なリップ塗ってもらって帰ってきた美紅に悠久が大きな牙をむく。 そのメイクがいかに合っていないかとねちねち執拗に指摘したあげく、クレンジングオイルを美紅の頭上からどばどばかける。しかも無表情。でも日が変わると今度は酷いことをしてしまったと優しげに振る舞うのが、暴力夫の典型的なタイプで恐ろしい。 その日の気分でガーリーになったりメンズになったりスタイルを変えるイヴとの服装のコントラストも絶妙だ。第2話ではフリーマーケットの場面で悠久とイヴが直接対峙する。相手を静かに威嚇し心の内に恐怖の渦をチャージする表情の西垣と『みなと商事コインランドリー』でピュアラブ高校生を演じた彼とは、ほんとうに同一人物なのか?