藤井聡太叡王、254日で8冠陥落 初の失冠…同じ21歳の伊藤匠七段に156手で敗れる 今シリーズ「終盤のミスが多かった」/将棋
将棋・第9期叡王戦五番勝負第5局(20日、甲府市・常磐ホテル)先手の藤井聡太叡王(21)=8冠=が挑戦者の伊藤匠七段(21)に156手で敗れ、対戦成績2勝3敗で4連覇を逃した。2020年の第91期棋聖戦で初タイトルを獲得後、初めての失冠で昨年10月に達成した全8冠独占から254日で7冠に後退した。2勝2敗で迎えた正念場で、序盤の攻勢から粘る伊藤新叡王の反撃に屈した。伊藤新叡王は初タイトル獲得となった。 甲府駅前にそびえる戦国武将、武田信玄像の威容にも負けないような猛攻から、まさかの失速。全8冠独占で「一強」と言われた藤井前叡王がタイトルを1つ失った。 「(失冠は)時間の問題だと思っていた。伊藤七段の力も感じた」 劣勢の最終盤。先に1分将棋に追い込まれた若き絶対王者は髪をかき上げ、水を飲み、息づかいが荒くなった。これまでほとんど見せたことのないしぐさ。投了直後、ゆっくりと天を仰いだ。 この日は対局前の振り駒で有利とされる先手番に決定。序盤は得意の角交換から隅に玉を寄せる穴熊で守りを固め、65手目▲7五歩で相手の急所を突いた。その後も波状攻撃を仕掛けたが、相手もミスのない指し回し。と金2枚で玉を包囲され、132手目△8八金で王手をかけられるなど反撃を受けた。 「予定通りの指し方で、途中まで攻めていく展開」だったという。大一番の重圧は「意識せずにやった」と平常心で臨んだが、今シリーズを「終盤のミスが多かった」と総括した。 藤井前叡王は5月からこの日までタイトル戦で7局指し、名人は連覇達成。今月6日に第95期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)が開幕し、今回は17日の棋聖戦第2局から中2日の強行日程だった。 8冠返り咲きには保持する7タイトルの防衛を続けながら、来年の叡王戦五番勝負に出場し勝利しなければならない。返り咲きについては「全く考えていない。まずは実力をつけること」。気持ちを切り替えて、最年少での「永世」称号資格獲得に王手をかけている棋聖戦の第3局(名古屋市)に臨む。(山内倫貴)