「先生の希望、全て引き継ぐ」 アフガン支援続けるスタッフ 中村医師殺害から5年
アフガニスタンで長年にわたって医療支援や用水路建設に力を尽くした医師中村哲さん=当時(73)=が現地で殺害されてから、4日で5年を迎えた。 【写真】PMSが支援する建設中の用水路 中村さんが設立したNGO「ペシャワール会」(福岡市)の現地団体「PMS」は、中村さんの死去後も新たに同国の河川3カ所にせきを完成させた。30年以上、共に活動を続けてきたPMS支援室長の藤田千代子さん(65)は「先生の希望は全て引き継いでいく」と力を込める。 中村さんは隣国パキスタンでハンセン病診療に携わった際、アフガン難民の治療をしたことなどをきっかけに、1989年から本格的にアフガン支援を開始。「復興の要は自給自足の農村の回復」と訴え、2003年に用水路の掘削に着手した。PMSはこれまで、同国東部の河川11カ所にせきと用水路を完成させ、かんがいした面積は2万3800ヘクタール超まで広がった。 「年々悪化している。気候変動による影響は間違いない」。藤田さんが心配するのは頻発する干ばつだ。苦労して造った用水路はここ数年、水を供給する河川の水位が大きく下がることが珍しくなくなった。中村さんも用水路の掘削当初から、地球温暖化への危機感を口にしていたといい、藤田さんは「先生が指摘していた状況が現実になりつつある」と懸念を示す。 中村さんは生前、「政権や国際情勢は変わるが、川は変わらない。川の水に頼る人里の生活も変わらない」と報告書につづっていた。藤田さんは「先生はこの世にはいないけれど、今でも心の中で対話している。託された任務に一生懸命取り組んでいきたい」と話した。