「健やかに生きるには『居場所』が必要 自分たちで場所を育てられることを実感」ジェーン・スー
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。 【写真】この記事の写真をもっと見る * * * 講演で各地にお邪魔する際、私は女性が、ひいてはすべての人が生きやすい社会をどう作っていくか、個人的な見解をベースに話しています。 初期は、女性が社会から「女性」としてみなされ生きていく上で抱えがちな問題を、「自信が持てないのは、あなた個人のせいではないかもしれませんよ?」と問題提起する内容でした。しかし考えを深めていくと、誰にとっても生きやすい社会にすることが、結果的に女性が社会や文化によって構築されたジェンダーに振り回されずに生きていく鍵になると思うに至りました。 そんな話をする時、私はいつも、健やかに生きていくには誰にとっても「居場所」が必要だと語っています。居場所とは、心身の安全が担保され、心から安心でき、かつ環境に受容されていると実感できる場所だと私は定義しています。 先日、堀井美香さんと一緒にやっているポッドキャスト番組「OVER THE SUN」の互助会員(リスナー)さん300人と、千葉・勝浦へ慰安旅行に行きました。これまでも何度か番組主催のイベントは催してきましたが、旅行は初の試みです。ありがたいことに、全国各地から、はたまた海外から大勢の互助会員さんが参加してくれました。ひとり参加も半分以上おり、互助会員さんたちの行動力に脱帽でした。 ほとんどの人が初対面同士にもかかわらず、行きのバスから和気あいあい、夜の宴会は輪をかけて大盛り上がり。翌朝のお見送りでは、宴会のあと朝3時まで部屋飲みをしたとか、UNOをやったとか、楽しい報告をいくつもいただきました。参加者のメイン層はアラフィフで、20代の方もいらっしゃいました。最高齢は72歳、最年少はお母さんと一緒に来ていた12歳。 堀井さんと私も、ほかの場所では顰蹙を買いかねないと披露しないような出し物をしたり、好きなことを自由に話したり。そして気づいたのです。警戒心を持たずに朗らかな自己表現ができるのは、互助会員さんたちの前では「安全・安心・受容」が実感できるからだと。 そういう社会にしていきましょうと高らかに説きながら、実際には我々がそういう場所を授けてもらっていたのだな。なんと幸運なこと。 互助会員さんたちにとっても、それらを体感できる場所だったと思います。自分たちで場所を育てられることを実感し、胸が熱くなりました。 じぇーん・すー◆1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中。 ※AERA 2024年12月16日号
ジェーン・スー