ガーズィー・ビンザグル サウジアラビア大使に聞く:日本との国交樹立70年、友好関係は最も強固に
サウジアラビアのガーズィー・ビンザグル大使に、2025年の国交樹立70年、エネルギーと地域安全保障分野における日本との協力、女性の地位向上について語ってもらった。 (聞き手はニッポンドットコム理事長の赤阪清隆)
2025年は国交樹立70年と大阪・関西万博
赤阪清隆 2025年はサウジアラビアと日本の国交樹立70年を迎える。記念行事の予定は? ガーズィー・ビンザグル 来年は2025年国際博覧会(大阪・関西万博)も開催される。記念すべき重要な節目に大使を務めることができ、光栄だ。 記念行事については、現在、日本と協力して計画を立てている。過去70年に及ぶ関係の変遷を振り返り、今後70年間の両国の方向性を示すような活気に満ちた、さまざまな行事を考えている。 赤阪 大阪万博ではどのようなパビリオンを出展するのか? ビンザグル サウジアラビアの精神、遺産、起源、未来を体現できる特別なものを準備する。パビリオンの色やデザインは砂漠のイメージを反映する予定だ。経済成長、活気ある社会、野心的な国家という3つの柱を基本にした計画「サウジビジョン2030」を掲げてから、サウジアラビア国内で起きた重要な変化を表現する。日本とサウジアラビアをつなぐ伝統的な側面、例えば投資、経済、エネルギーとエネルギー安全保障などに加え、両国のみならず世界全体に恩恵をもたらす新しいコラボレーションも紹介したい。
エネルギー分野で協力
赤阪 脱炭素、安全な水の確保、化石燃料からの脱却といった世界的な喫緊の課題に取り組むためには、テクノロジーは欠かせない。現在、進んでいる両国間での協力分野は? ビンザグル 例えば、淡水化事業。日本は長い時間をかけて、製造過程の低コスト化、効率化に成功した。その結果、恒久的に水を提供する技術を日本は提供してきた。これは、粘り強く解決策を追求し、実用的な方法で技術を開発・応用する日本の強みを浮き彫りにしている。 サウジアラビアは従来の化石燃料から再生可能なエネルギーへシフトするためのエネルギー対策を生み出そうとしているので、日本と長期のパートナーシップを築くことは重要だ。 両国の関係機関で協力して、代替エネルギーの試験的プログラムを実施している。代替エネルギーのコスト低減をもたらし、従来のエネルギー源と同等もしくはそれ以下にするという成果を上げている。開発されたテクノロジーが単に感動的というだけでなく、より良い世界に向けた問題解決の可能性に、わくわくしている。 赤阪 日本やアジア諸国にとって、サウジアラビアは石油の供給源として不可欠だ。脱炭素化の流れの中で、石油からの移行にどのように対応していくのか? ビンザグル 石油は長い間、日本を含む多くの国との関係を結ぶ中心的存在だった。しかし、石油への依存は経済的にも環境的にも持続可能ではないことを認識するようになった。その上でサウジアラビアが世界における石油のハブではなく、エネルギーのハブになるという考え方を受け入れた。伝統的エネルギーに替わるものをスムーズに取り入れていく一方、それらを既存の製造工程や構造、システムに円滑に組み込めるようにしていく。エネルギートランジション(移行)を単なるイデオロギー的宣言ではなく、現実のものにすることが重要だ。 ここでもまた、日本とのパートナーシップは不可欠で、両国ともに再生可能エネルギーへの移行に深く関わっている。利用できる技術に絶えず手を加え、それらの技術を新しいエコシステムに転換する必要性も認識している。例えば、天然ガスや石炭などの化石燃料を燃焼して取り出したブルー水素や水を電気分解してつくるグリーン水素など代替エネルギーのバリューチェーンやサプライチェーンにおいて、日本とサウジアラビアがパートナー関係を結ぶことは理想的だ。私たちの挑戦はまだ始まったばかりだが、目に見える成果と大きな可能性に期待している。