ガーズィー・ビンザグル サウジアラビア大使に聞く:日本との国交樹立70年、友好関係は最も強固に
中東における地域安全保障
赤阪 中東の石油や天然ガスへの依存が大きい日本は、中東地域の紛争を注視している。中でも平和と地域の安全を確立するパートナーとしてサウジアラビアに期待してきた。サウジアラビアは、どのようにして長期的に安全保障に貢献するのか? ビンザグル 中東に限らず紛争はどの地域でも勃発する。適切に対処しないと激化し、人類の発展や健康に損害を引き起こすだろう。安全保障と発展はまさに表裏一体だ。「サウジビジョン2030」を打ち出してから、サウジアラビアは包括的な社会経済の道筋を明確に示し、積極的に進めてきた。中東をはじめとする世界中の長期的紛争は、関わるすべての人たちに対し、公平なやり方で解決すべきである。長引く紛争は甚大な被害をもたらすだけだ。 サウジアラビアは重要資源に恵まれ、中東や世界の発展に寄与する大きな可能性があり、地理的にも重要な地域の中心にあることを、積極的に発言してきた。中東の平和と発展は、全世界共通の利益になると信じている。それは、中東が健全な経済力と全人類共通の利益に支えられているからだ。ただ、少し理想的に聞こえるかもしれないが、共通の利益だけ追求しても、より良い世界になるとは限らない。持続可能な経済、優れた統治、すべての人が享受すべき質の高い生活といった共通の価値観を共有する必要がある。それは、サウジアラビア人であろうと、日本人であろうと、国籍に関係なくすべての人に当てはまることだ。 サウジアラビアは、日本のような信頼できるパートナーと二国間、および多国間での協力関係が増えており、それぞれの地域や世界において重要な価値観を共有している。このような取り組みは安全保障や長期的発展のためには不可欠で、日本もサウジアラビアも、理にかなった方法で世界情勢に深く関与している。
声を上げるサウジアラビア
赤阪 「サウジビジョン2030」の下、サウジアラビア自体が変革しているが、世界と共有したいメッセージはあるか? ビンザグル 今、世界中で難題が山積しているが、この時代にサウジアラビア人として生きることに誇りを持っている。ビジョンを持って生きている人にとっては、ピンチはチャンスになるかもしれない。「サウジビジョン2030」の根底にあるのは、サウジアラビアにとっての利益は、長い目で見ると他国にも利益になるという考えだ。サウジアラビアは長年にわたり、汚職、過激主義、非現実的なビジョンなど、持続可能な開発を妨げるすべてのことに対して、明確な判断を下してきた。 さらに、われわれは責任感や指導力を養い、理想と現実のバランス感覚を持つ必要がある。例えば、社会や地域におけるビジネスの活性化、活力ある社会形成のサポート、尊敬や思いやりの気持ちで他者と関わることが求められる。こうした考え方の根底にあるのは、1400年にわたるイスラムの歴史と、それ以前の数千年におよぶ誇り高き先史時代から形成されたサウジアラビアの伝統と価値観だ。 われわれはアラブ・アイデンティティーに誇りを持っている。アラブ・アイデンティティーには、アラビア半島の歴史や伝統に深いルーツがあり、言葉や遺産だけでなく、300年続く君主制国家としての誇りなど、グローバルな視野を持っている。「サウジビジョン2030」では、これらのアイデンティティーを力強く、効果的に表現している。