しんどい現実に向き合えなくても。他者を知る手段としてのドキュメンタリー
── 学生時代から現地を訪れて、撮影を行っていたんですね。 そもそも、どうしてミャンマーでロヒンギャの人々に対するヘイトが存在するのか不思議で、その理由を知りたかったんですよね。だけど何より、ロヒンギャ難民が直面している問題をこの目で確かめてみたくて。現地での経験は大きなモチベーションとなり、その後1年間休学し、撮影のため再びミャンマーを訪れました。
── 2021年2月にはミャンマーでクーデターが起き、政権トップのアウンサンスーチー国家顧問(当時)などが拘束されたことで、市民らは抗議活動を始めました。その後も久保田さんはミャンマーに向かったのでしょうか? クーデター後、僕のミャンマーの友人たちも抗議活動で逮捕され、連絡が取れなくなった人も多くいました。その時「今の友人たちの姿を映すことで、ミャンマーの現状を伝えることができるのではないか?」と思い、2022年7月にミャンマー最大の都市ヤンゴンに入り、国軍への抗議デモの撮影を始めたんです。 だけど、デモの現場で私服と思われる軍人に捕まってしまい、扇動罪などの罪で計10年の禁錮刑が言い渡されました。僕は外国人ということもあり、約3か月半を獄中で過ごしたあと、解放されて帰国することができました。ただ、撮影に協力してくれたミャンマーの友人が、僕の拘束をきっかけに母国を離れざるを得なくなって。 ── なんと......。 そんな友人のためにも「帰国したら、ミャンマーのために本気で活動しよう」と思いました。それで、解放された約3か月後にジャーナリストの北角裕樹さんと協力して、国外へ亡命しているミャンマー人のクリエイターを支援するプラットフォーム「Docu Athan(ドキュ・アッタン)」を立ち上げたんです。
── 「Docu Athan」は映像の視聴を通じて、クリエイターを応援することを目指しているんですね。 僕はよくテニスのYouTubeチャンネルを見るのですが、自分が応援している選手が成長したり、試合に勝ったりすると嬉しいんですよね。そんな風に、視聴者の方もミャンマーのクリエイターたちを「Docu Athan」で追いかけながら、成長を感じとってもらえたらいいなと思っています。 また今後は現地に拠点を置き、よりクリエイター支援に力を入れていきます。最近、タイの国境地帯に「Docu Athan」のアトリエを借りたので、現地の人をフルタイムで雇いながら事務所兼作業場として使っていきます。いずれはアトリエに世界中のジャーナリストの方を呼んで、交流の場にしていきたいですね。