国会議員の香典に捜査のメス「特捜部は裏金の捜査をあきらめていない」
検察の判断はいかに巨額であっても、この件では政治資金規正法で同一企業からの献金は年間150万円までと定めた量的制限違反にしか問えないというものでしたが、これには世論も納得できず、東京の霞が関にある検察庁の看板に抗議の黄色いペンキがかけられ、私もそのとき現場におり、もう検察は終わりではないかなどと本気で思ったものです。 しかし翌年3月、特捜部は金丸元副総裁を脱税容疑で逮捕し、起訴しました。これはヤミ献金をしつこく捜査した結果という構図ではなく、東京国税局査察部が密かに調査を進め、金丸元副総裁の不正な蓄財を探し当てていたというものでしたが、特捜部が金丸元副総裁の捜査をあきらめていたら、国税局の極秘調査も日の目を見なかったと思います。 裏付け捜査の中で、金丸元副総裁への大手建設会社からの献金の実態もこのときに明らかになり、最終的には建設大臣の贈収賄事件にも発展したゼネコン汚職につながりました。 堀井議員の事件が、自民党派閥のパーティー券をめぐる裏金問題の大物議員の立件につながっていくかどうかは分かりません。ただ、裏金の使途を解明する過程で別の事件が明るみに出たことを私は重視しています。 金丸元副総裁の巨額脱税事件の立件の裏に、国税当局がいたことも忘れてはなりません。国税局のマルサといわれる査察部門に加えて、「料調」と呼ばれる資料調査課という組織もあり、常に金の流れを調べています。脱税事件の大半は、マルサが告発して検察が起訴などの刑事処分をしていますので、両者には強い関係があり、マルサの職員が特捜部の組織にも加わっているのです。 「政治家とカネ」の問題について、世論の我慢は限界に来ています。自民党議員が派閥から裏金を受け取っていたのはおおむね2018年ごろから22年ごろですので、まだ時効にも時間があります。私は少し長い目で検察の捜査に注目していきたいと思っています。 ■◎山本修司(やまもと・しゅうじ) 1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。
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