国会議員の香典に捜査のメス「特捜部は裏金の捜査をあきらめていない」
ただ、堀井議員の事件に、私は注目すべき点があると思っています。今回はこれが焦点になります。 ■裏金問題の捜査から新たな犯罪の掘り起こしに ちょっと裏金問題を振り返ると、あの裏金は、派閥が政治資金パーティーを開く際、ノルマ以上にパーティー券を売った議員にその分を戻していました。この金は派閥から議員本人への寄付にあたり、政治資金収支報告書に記載していれば、法的には問題のないお金でした。しかし、多くは記載しておらず、つまり政治資金として処理していなかったため「裏金」とされました。 これは政治家個人の所得だから、税務申告していなければ脱税ではないかという指摘もありましたが、記載ミスと主張されればそれを覆すのは容易ではありませんし、いろんなお金と一緒になってしまえば、お金に色はついていませんので、どれが還流資金を判断するのも難しく、立件されることはなかったというのが現状です。 ただ、もし何らかのきっかけで使途がはっきりすれば、罪に問える可能性が出てきます。今回の堀井議員の事件がそれなのです。 堀井議員が還流を受けた2196万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして大学教授が5月に政治資金規正法違反容疑で刑事告発し、特捜部が使途や原資についても捜査する中で今回の違法な香典が明るみに出ました。 今回の事件では、仮に原資が裏金だと判明した場合、派閥パーティーの還流資金が大規模な香典の配布、これにはいずれ来る選挙で票につなげたいという意思が見えますから、広い意味での選挙買収に使われたという事実が判明することになります。これは悪質ですね。 何よりも私が注目するのが、特捜部は裏金の捜査をあきらめていないことです。使途が判明すれば、裏金の性質が明らかになります。政治資金規正法の不記載というある意味形式犯でない、新たな犯罪が掘り起こされることになるわけです。 ■検察と国税当局による立件は過去にも 私が経験した事件には、政界のドン、最高実力者といわれた金丸信・元自民党副総裁が逮捕された巨額脱税事件がありますが、これは1993年のことです。その前年に、金丸元副総裁は東京佐川急便から5億円のヤミ献金を受けながら、政治資金規正法違反(量的制限違反)で罰金20万円の略式起訴処分としたことで、検察が猛烈な批判を受けたことがありました。