買った県で納税じゃない? 地方消費税の複雑な配分基準
2015年3月31日に税制改正関連法が成立しました。昨年4月に消費税率は8%になりましたが、今回の法律で景気条項も撤廃され、2017年10月から消費税率が10%に引き上げられることが決まりました。 消費税率の引き上げは、日用品の価格も大きく変動します。生活に直接的に影響があるので、税率に目が行きがちです。他方で、今年4月1日から消費税の“中身”が変わったことはあまり知られてはいません。
4月1日から新しい算出方法に
現行の消費税の内訳は国税分が6.3%、地方税分が1.7%です。これは消費税が8%に引き上げられたときに変更されました。消費税収は国税分が約13兆円、地方消費税分が約3兆円となっています。 地方消費税は消費税が3%から5%に引き上げられた際に創設された税目です。地方消費税は都道府県税ですが、消費税とともに国がいったん徴収します。その後、47都道府県で分配しています。それでは、地方消費税はどのように計算されて分配されているのでしょうか? 「これまで地方消費税は、都道府県の間で『人口』『従業員数』『小売年間販売額』『サービス業対個人事業収入額』などに基づいて清算されていました。算出基準となる数値のうち、小売販売額やサービス業事業収入額などが8分の6を占めています」(総務省都道府県税課) 算出基準値に照らし合わせて、配分を調整しているわけです。4月1日から算出基準が見直されたわけですが、こんな面倒臭い計算をしているのは、なぜなのでしょうか? お金を使った(消費した)店のある都道府県に納税する仕組みにしてしまえば、もっと簡素化できると思うのですが……?
埼玉県で買っても本社が東京だと……
「地方消費税を負担しているのは消費者ですが、それを納税しているのは事業者です。事業者は本店や本社の住所地や所在地のある都道府県(課税地)に納税しています。また、商品は製造業者や流通業者を経て小売店に並びますが、この過程でも業者間で消費税が発生しています。そうなると、実際に消費された都道府県(最終消費地)とは別の都道府県に納税するケースが出てきます。複雑な仕組みは税を公平に帰属させるための措置です」(同課) つまり、埼玉県や千葉県でモノを買っても、その店の本店や本社が東京にあると東京都に消費税が納税されるというわけです。ほかにも、奈良県で営業している店の多くは大阪府や京都府に本社や本店を置いています。また、奈良県民は隣接する大阪や京都に出かけて買い物をすることも多いため、奈良県の一世帯当たりの消費支出額は全国トップクラスにも関わらず、奈良県の地方消費税収は47都道府県の中でもかなり少ないのです。そうした事情から奈良県は、地元で買い物をする啓発活動に力を入れています。 こうした制度では本店や本社が多く集まる大都市に消費税収が偏重します。そうした偏重を緩和するために、地方消費税は複雑な制度を採用しているのです。