取締法改正でどうなる? 日本における良い大麻、悪い大麻を規定「大麻業界」の今とこれから
大麻から製造される医薬品については、近年アメリカをはじめとする欧米各国において使用が承認されるなど、国際的に医療上の有効性が認められてきた。今回の法改正では、難治性てんかん治療薬「エピディオレックス」をはじめとした医薬品の施用や製造、さらには医療目的の大麻の栽培も可能となった。 日本ではこれまで大麻由来の医薬品は、施用はもちろん研究や開発もまったく進んでいなかったが、今後は製薬会社や大学などを中心に活発な動きとなるだろう。 一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会の理事長で、聖マリアンナ医科大学脳神経外科学教授などを務める太組(たくみ)一朗氏は「大麻を医薬品として使用できるようになった。この観点から法改正には100パーセント満足。難治性てんかん以外の疾患においても大麻由来の医薬品が有効ならば、国産の創薬を目指したい」と話す。 一方で、後者の薬草については、改正でより厳格に規制されることとなった。酩酊するために大麻を吸うことと、健康目的で大麻を吸うことは、目的は異なれど同じ行為と見なされるためだ。 ここで問題になるのが、日本へのインバウンド観光客についてである。"広義の医療"としての大麻に関して情報発信を行なっている薬草大麻ラボの代表は「カナダ、アメリカの一部の州、タイなどでは薬草としての大麻利用は合法です。 改正法どおりの法運用を行なえば、外国人観光客が日本を訪れたとして、もし何かのきっかけで尿検査が行なわれ大麻の陽性反応が出れば、当然『使用』と見なされて処罰の対象とされます。場合によっては国際問題となる可能性もあり、今後の大きな論点になると予想されます」と懸念する。 法改正を経て、日本の大麻を巡る状況は激変した(図表4)。しかし、海外とのギャップが深まった面もある。北米を中心に、大麻は産業・嗜好・医療面で莫大な税収や雇用を生み出しており、「グリーンラッシュ」とも呼ばれている。 こうした動きに日本がキャッチアップするためには、今回の法改正を暫定的なものとして、大麻に関してよりフラットで開かれた議論が行なわれていくべきだろう。 ●大麻博物館一般社団法人。2001年に栃木県那須町に開館。日本人の営みを支えてきた農作物としての大麻の情報収集や発信を行なう傍ら、各地で講演や「麻糸産み後継者養成講座」などのワークショップを開催。著書に『日本人のための大麻の教科書 「古くて新しい農作物」の再発見』(イースト・プレス)などがある。 取材・文・写真/大麻博物館